タイ最大の商業銀行・バンコク銀行が、外国人の口座開設および利用に関する規制を強化しました。2025年5月下旬以降、長期ビザを持たない外国人による新規口座開設が停止され、既存口座にも利用制限がかかるケースが発生しています。2025年5月28日にバンコクポストなどが伝えています。
この措置は、不正送金対策や金融詐欺防止を目的としたもので、タイ政府によるマネーミュール口座(犯罪者が資金移動に利用する他人名義の口座)への監視強化の一環とされています。
ロシア人の混乱から広がった懸念
口座凍結やカードの利用停止が最初に多数報告されたのは、タイに滞在するロシア人たちでした。SNSや支援団体によると、新基準を満たさないロシア人顧客の口座が次々に凍結されており、バンコク・コミュニティ・ヘルプ財団は「同様の措置が他国籍の外国人にも適用される可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
実際に、バンコク銀行の広報担当者はロシア国営通信TASSに対し、「2025年1月以降、観光目的の外国人には口座を開設していない」と認めています。該当するのは一般的な観光ビザに加え、最大180日滞在可能な“ディスティネーション・タイランド・ビザ(DTV)”の保有者も含まれるとのことです。
対象となる外国人の条件
バンコク銀行で今後も口座開設・利用が可能なのは、以下の条件のいずれかを満たす外国人に限られます。
タイの長期滞在ビザ(就労・留学・退職・家族など)を保有している
タイ人と婚姻関係にある
タイ国内に不動産を所有している
すでに口座を保有している場合でも、同行が疑わしい取引や規制違反の可能性を検出した際には、一時的な口座凍結や来店による生体認証の要求などが行われることがあります。
背景には大規模詐欺事件
今回の規制強化は、パタヤで明るみに出た不正口座開設事件を受けたものと見られます。観光ビザの外国人に対して15の口座が違法に開設され、そこへ流れ込んだ詐欺資金が短期間で現金化された上、関与者が国外へ逃亡したと報じられました。警察はこれを国際的なコールセンター詐欺ネットワークの一環とみなし、損害額を22億バーツと推定しています。
こうした流れを受け、タイ中央銀行も各銀行に対して、本人確認の厳格化とリスク評価の徹底を求める通達を出しています。今後はマネーミュール口座のデータベースとの照合、リスクに応じた取引上限の設定などが義務化される見通しです。
長期滞在者以外の銀行利用が難しくなりつつある今、タイに滞在する外国人の皆さんは、ご自身のビザ種別や口座の状態を一度確認しておくことをおすすめします。
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