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江戸の町奉行といえば、大岡越前とか遠山の金さんとか、時代劇で知られたスターどころの役職だが、実は大変な権力者でもある。
今で言えば、知事、裁判長、警察庁長官を一人(南町と北町で、実際は二人)で兼ねているといえば、想像しやすくなるか。その
代役、ピンチヒッターとはいえ、喩えは不適当かもしれないが、広域暴力団の組長が、子分を引き連れて市中を見廻るようなものだ。
参考までに、弾左衛門の見廻り巡回行列の陣容を紹介しておこう。
刀を差した三人の侍を先頭に、若い侍三人が続き、弾左衛門が乗った駕籠には、駕籠かきが三人と交代要員三人の計六人。駕籠のうし
ろには、やり持ち一人、はさみ箱持ち一人、ぞうり取り二人、茶・弁当持ち一人。馬を引く者一人、雨具やたんすなどを運ぶ者六人、
行列を取り仕切る宰領が一人、行列のしんがりを勤める侍一人。これで計二十六人となる。ただし、このものものしい行列が、町奉行
のものではないと、ひと目で分かるようになっている。