岐阜県揖斐郡揖斐川町久瀬地区の揖斐川や支流を管轄する揖斐川久瀬漁業協同組合(久瀬漁協、同町東津汲)の資金繰りに余裕がなくなっていることが、7日までに分かった。漁協の口座から約570万円を横領していた元職員の女性(73)=業務上横領罪で有罪確定=からの弁済が進んでいないためだ。年間予算の多くを占める額を失い支出を抑える取り組みはしているが、高橋豊二代表理事組合長は「やりくりには限界がある。(組合が)つぶれてもおかしくない」と明かす。
判決や久瀬漁協によると、女性は夫が経営していた会社の運転資金などに充てるため、2021年4月に漁協の口座から10回に分けて計572万円を横領した。揖斐署は業務上横領容疑で書類送検し、岐阜地検は同罪で起訴した。24年7月に岐阜地裁大垣支部は懲役1年8月の実刑判決を言い渡し、名古屋高裁で確定した。県警などはこれまで公表していない。
女性は横領発覚以前にも約1500万円の横領と返済を繰り返していたという。発覚から月5千円~2万円ほどを定期的に返済しているが、計約100万円にとどまっている。
久瀬漁協の年間予算は約1千万円で、主な収入源は鮎やアマゴの釣り人に対する遊漁証の日券(1500円)や年券(4500円)の販売。釣りの環境は優れているものの、釣り人の高齢化も進んでおり、遊漁者や正・準会員は減少傾向にある。
高橋代表理事組合長は「元々資金が少なく、今回の横領被害は非常に痛手。返済のペースを考えると、全てが戻ってくる可能性は少ない」と頭を抱える。放流する鮎の稚魚の購入量を減らして漁協で育てるなど支出を抑えてはいるが、「まさに綱渡り。泣き寝入りではとても納得できない」と語る。