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『宣誓の夏 輝く初白』
第69回全国高校野球選手権第1日
1987(昭和62)年8月8日
「あの深紅の大優勝旗のごとく、真っ赤に燃え尽き、悔いのないように正々堂々と戦い抜きます」。
夏の甲子園で金沢の岩井大主将が一言一言、かみしめるような口調で健闘を誓った。
第57回大会の橋場滋主将(桜丘)に次ぐ石川勢2人目の選手宣誓。大観衆が見守る開会式で大役を無事務めた岩井は「百点満点です。最高です」と満面の笑みで声を弾ませた。
感激に浸る間もなく、初日の第3試合に控える初戦に向け、岩井、エースの岡本寿をはじめナインは頭を切り替え、鳥取代表の八頭に挑んだ。
石川大会の決勝で宿敵星稜に1ー0で完封勝ちした金沢。「レベルの高い石川の代表となったので、甲子園でもいい試合をしなければならない。勝ってきます」と樺木義則監督が豪語した通り、3ー2で競り勝った。
春は3勝を挙げているが、夏は7年ぶり4度目の出場で初白星。西東京代表の東亜学園と対戦した2回戦は2ー3で惜敗。それでも岩井は「真っ赤に燃え尽きることができました」とさわやかに甲子園を去った。
【24年後に後輩宣誓】
そして、東日本大震災が起きた24年後。岩井が部長として臨んだ夏の甲子園で後輩の石田翔太主将が宣誓台に立つ。
「支え合い、助け合い、頑張ろう。深い絆と勇気を届けられよう全力でプレーする」。
復興に向けた呼び掛けにスタンドからは割れんばかりの拍手が起こった。
あの時と同じ開幕日に初戦を交える。
1回戦で伊勢工(三重)を4ー0、2回戦で聖光学院(福島)を4ー2で破り、3回戦で習志野(千葉)に1ー2で惜敗。
金沢は初めて挙げた2勝の夏から甲子園が遠ざかっている。