大統領府で3日、日本の政府開発援助(ODA)の円借款から資金調達されている首都圏地下鉄事業(フェーズ1)における建設2契約パッケージの署名式が行われた。
首都圏ケソン市のケソンアベニュー~イーストアベニュー間の地下駅建設およびトンネル工事は西松建設と比企業DMコンスンヒが、アノナスおよびアギナルド両駅の建設とトンネル工事は三井住友建設が正式に受注した。
署名式はケソン市国軍本部での実施予定だったが、前日に急きょ大統領出席が決まり、会場が大統領府に変更された。
日本側からは森昌文首相補佐官、松田賢一駐フィリピン日本国臨時代理大使、国際協力機構(JICA)の中澤慶一郎理事、外務省の遠藤和也国際協力局長らが列席。
比からはマルコス大統領のほか、ベルサミン官房長官、バウティスタ運輸相、ケソン市のベルモンテ市長、エストラダ元大統領の息子で上院議員のJVエヘルシト議員らが出席し、比政府が「世紀の事業」と位置づける首都圏地下鉄の建設契約署名を見守った。
マルコス大統領はスピーチで「この事業が完工すれば、ケソン市~パサイ市間の通勤時間が1間30分から35分に短縮される。
また速さだけでなく、旅客輸送量も路上交通と比較して格段に多くなる」と説明。
「帰宅するころには深夜1時半を過ぎ子どもが寝てしまっていたり、通勤のために朝4時に起きなくてはいけないといったことは大幅に改善される」と述べ、慢性的な渋滞に悩まされる首都圏住民に理解を示しながら、生活の質向上に期待を寄せた。
また日本のインフラについて「非常に効率的な鉄道輸送システムで世界中から評価されており、いつの日か比も追いつきたい」と発言。
その上で、日本のODA事業を担うJICAについて「このプロジェクトだけでなく、約50年にわたり比の開発を支援してきた。
比の農業とインフラはJICAなしで今日の姿はない」とし、JICAの比に対する「継続的な関心」に感謝を表した。
松田臨時代理大使は「地下鉄は渋滞を減らすことで温暖効果ガス排出を大幅に削減し、気候変動の緩和にも貢献する。
また(インフラ改善により)世界中から投資を誘致し、経済を活性化させる力となる」と多面的な便益を強調。
「比国民生活の向上に関し、日本がマルコス政権の主要なパートナーとなれていることを誇りに思う」と述べて事業完遂までの継続的な支援を約束した。
JICAの中澤理事は「バウティスタ運輸相の力強いリーダーシップの下、首都圏地下鉄事業は全速力で前進すると確信している」と比当局への信頼を表し、その上で「JICAは最も信頼あるパートナーとして、比史上初の地下鉄建設に日本企業の専門性とノウハウをもって全力のサポートを継続する」と宣言した。
運輸省によると、首都圏地下鉄建設計画は、首都圏バレンスエラ市からパラニャーケ市まで全長33・1キロ、2028年の完工を予定している。
円借款総額3578億3700万円。
完成すれば1日51万9000人の旅客が輸送可能となる見込み。
(竹下友章) 首都圏地下鉄事業署名式。
手前左はバウティスタ運輸相、右は三井住友建設の山地斉マニラ事務所長=3日、大統領府で竹下友章撮影
【日時】2022年11月04日(金)
【提供】まにら新聞