生物の染色体の末端にある「テロメア」と言う部分をご存知だろうか?
細胞分裂のたびに少しずつ短くなり、数が減っていくことで、最終的に細胞が老化すると考えられていることから、「命のロウソク」とも言われているが、国際宇宙ステーション(ISS)で1年間過ごした米国人の宇宙飛行士は、テロメアが長く伸びていた事実が明らかになった!
この実験を行ったのは、2015年3月から340日間にわたって、ISSに滞在した米航空宇宙局(NASA)所属のスコット・ケリー飛行士。
スコットさんは、一卵性双生児の兄で、弟のマークさんも元宇宙飛行士。
同じ遺伝子を持った双子を放射線量の多い無重力空間と地上で生活させることで、二人の身体にどんな変化が起こるのか比較実験を行なったNASAは今月1日、中間報告を発表した。
それによるとスコットさんは、地球に帰還して数時間〜数時間後には、無重力空間で伸びた身長が元どおりになるなど、生物学的な変化の多くはミッション前の状態に戻った。
興味深いのは、白血球のテロメアの変化だ。
宇宙滞在中、スコットさんのテロメアはかなり長く伸びていたという。
研究者のスーザン・ベイリーさんは「無重力空間で筋肉量を減らさないよう熱心に運動したことと、地上に比べてカロリー摂取量が少なかった点と結びついている可能性がある」と指摘。
奇妙なことに11月には、地上にいるマークさんと宇宙のスコットさんの両方で、テロメラーゼ活性が増加していた。
これはテロメアの短縮を克服するための酵素で、活性化するとテロメアの長さが安定する効果がある。
11月といえば米国では感謝祭のイベントがあることから、研究チームは「この年は家族や親戚が集まる感謝祭のストレスから解放されたせいだろうか?」と推測している。
しかし、宇宙でのテロメアの伸長は、スコットさんが地球に戻ってから、わずか二日以内に再び縮み始めたという。
この画期的な研究成果の全体像が見えるのは今年後半。
NASAの研究チームは、スコットさんの実験を通して、火星探査への足がかりにしたいと構想している。
【日時】2018年02月06日(火) 16:48
【提供】ハザードラボ