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絶体絶命…まさにあの試合はそうだった。2対3、1点ビハインド。9回裏ツーアウト1.2塁まで俺達は追い詰められていた。ネクストバッターズサークルでとにかく俺は、志位和夫を祈るようにみつめていた。志位が倒れた時点で即試合終了。とにかく「おれまでまわせ!」と祈るしかなかった。相手の長身サウスポー投手から投げられた球が、スッポ抜け志位めがけて向かっているのを目のあたりにした。俺は思わず志位に向けて叫んだ、「当たれー!」志位の耳がピクッと動き、ヤツのメガネがふっとび割れた。そう、ヤツはあたりにいったんだ…違う意味で倒れ伏せた。ツーアウト満塁、まわってきた。みんなが繋いで作ってくれたチャンス。俺はタンカで運ばれていく志位和夫や、3塁側の応援席に向かって心の中で歌った。「どんな時も支えてくれた 笑い泣いた仲間へ 心込めて
ただひとつだけ 贈る言葉はありがとう」
そして、「1番セカンドkeibaくん」のアナウンスとともにネクストバッターズサークルからバッターボックスへと俺は向かった…と、その時…。背後の3塁側の応援席から、大きな歌声が聞こえてきた。
「百年先も愛を誓うよ keibaは僕の全てさ 信じている
ただ信じてる keiba お前が決めてくれ
愛している ただ愛してる keiba お前が決めてくれ」
そして俺はこう叫びながら打席にはいった。
「しゃあぁー!俺がこの試合決めてやらあぁー!!」
そう、絶体絶命のあの日の試合は決して忘れない
私はその後、阪神タイガースで現役生活を過ごし、今広島東洋カープのヘッドコーチをさせてもらっています