📖 創作･携帯小説

時は山の彩る初秋のスナック街。10人ほど客の入るスナックで、男は飲んでいた。周りの客と話す事もなく、うつ向き、時折りため息をつきながら霧島を飲んでいた。歳は32歳、名は雄太。のちの主人である。

「おう、きていたんか？大丈夫か？」
上着の雨を払いながら、スナックのオーナーが入ってきた。
「お疲れ様です」声をかけると、氷の入ったグラスを片手にオーナーは雄太の側に座った。

オーナーの顔を見ると、雄太は涙が溢れた。
「やっぱり、寂しいですわ。母ちゃんが亡くなってひとりぼっちや。仕事もなかなかないし。これからどうしようと頭がいたいですわ。」そういって焼酎をぐいと飲んだ。

「そんな時もあるが。今夜は飲むぞ！何か食べるか？
おい、つまみ！」
カウンターにいた嫁であるママに声をかけた。

「オーナーがきて良かったわ。雄ちゃんがオーナーを待っていたわよ。オーナーどうする？奥のボックスに雄ちゃんと移動する？」ママは手際よくグラスを移し移動しなさいと手招きした。

軽く酔いがまわった雄太をカバーするかのように、オーナーが雄太の後ろに続いた。
「すいません」
雄太は頭をぺこりと下げボックスに座る。

「水と焼酎と氷を置いてくれれば、よかけ？」
「はい」
オーナーに酌をしながら雄太は返事した。

私は介護施設に働いていた。入所者の介護に追われて毎日がバタバタで仕事が終わる頃には、身体もぐったりだった。厳しい先輩方に、指導を受けながらけちょんけちょんにいわれ、涙を流さないように、頑張っていた。
デイサービス、訪問、食事作り、風呂、夜勤の係りが、ランダムに組まれていた。入所者さんは、認知症があり、徘徊、被害妄想もあるが、優しい方々ばかりだった。休憩になると私は携帯のチェックをしていた。着信5回、メッセージ3件。相手は元カレだった。元彼は付き合っていくうちに性欲が強くなり強制するようになってきた。私はそんな毎日が嫌になり彼に別れをつげた。相手も了解したものの、帰宅すると押しかけてくるようになり、それが嫌で、飲みにでて時間を潰そうと考えた。