先週から始まった秋競馬は先週に当サイトでも予言した通り、中山も中京も芝のレースはノーザンファーム生産馬の独壇場となった。
芝のレースは土日合計22レースが行われたが、ノーザンファームの生産馬が勝利したのはなんと12レース。半分以上のレースでノーザンファームの馬が勝利しているのである。2~3着馬も加えれば、さらに多くのノーザンファームの馬が活躍しているのだから、もはやノーザンファーム抜きの馬券戦術は有り得ないといっていい。
その中でも特筆すべきは重賞レースだ。
秋華賞トライアルの紫苑S(G3)は、ノーザンファームの生産馬ファインルージュが勝利しただけでなく、2~3着もノーザンファームの生産馬となり秋華賞(G1)の出走権を独占した。さらに京成杯オータムハンデ(G3)も1着カテドラルから3着まで独占、セントウルS(G2)も1着レシステンシア2着ピクシーナイトでワンツーフィニッシュとなり、圧巻の成績を残しているのである。
この結果から見ても、この秋もノーザンファームの勢いが止まらないだろう。来週の神戸新聞杯(G2)に出走する日本ダービー馬シャフリヤールを筆頭に、秋華賞には桜花賞馬ソダシ、天皇賞・秋(G1)にもグランアレグリア、エフフォーリアらが出走を予定。凱旋門賞(G1)にはクロノジェネシスと、国内外でノーザンファームの馬が主役となっているのである。
それは今週行われる菊花賞トライアルのセントライト記念(G2)、そして秋華賞トライアルのローズステークスも同様だ。
トライアルレースはノーザンファームにとって非常に重要なレース。なぜならノーザンファームにとってクラシックを制するのはもちろん、どれだけ多くの生産馬をG1レースに出走させるかに重きを置いていると思われるからだ。
例えば先週の紫苑Sにもノーザンファームの馬は18頭中8頭が出走し、秋華賞の出走権を得られる1~3着を独占した。そして今週のセントライト記念も5頭、ローズSも6頭が出走する。すでに賞金的に本番(菊花賞・秋華賞)の出走権を持っている馬もいれば、ここで3着以内に入らなければ賞金的に本番の出走が危ぶまれる馬もいる。
そういった状況も踏まえ、どの馬がノーザンファームの「推し」なのか、このトライアルレースを推理するのも競馬の醍醐味だ。
今回はセントライト記念とローズSに出走するノーザンファームの生産馬をチェックし、どの馬を買うべきなのか、どの馬が穴馬として狙いなのか、様々な視点から検証してみた。
■ローズSに出走するノーザンファームの生産馬
アンドヴァラナウト
父:キングカメハメハ
母:グルヴェイグ
母父:ディープインパクト
馬主:サンデーレーシング
厩舎:池添学
騎手:福永祐一
募集額4000万円。抽選を通過して出走。ここまで5戦2勝2着3回と抜群の安定感。左回りの2000mでも結果を出しており条件はいい。デビューから騎乗している福永騎手も「ポテンシャルは高い」と評価しているが、「まだ体ができていない」とも語っており本格化は来年か。それでも期待が高まる良血馬。
アールドヴィーヴル
父:キングカメハメハ
母:イサベル
母父:ディープインパクト
馬主:近藤英子
厩舎:今野貞一
騎手:松山弘平
桜花賞(G1)5着、オークス(G1)5着、そしてクイーンC(G3)はアカイトリノムスメと同タイム2着と実績は上位。賞金的に秋華賞の出走が微妙な立場だけに、ここは全力投球か。主戦の松山騎手が引き続き騎乗するのもいい。
コーディアル
父:エピファネイア
母:ボンジュールココロ
母父:リンカーン
馬主:キャロットファーム
厩舎:高野友和
騎手:鮫島克駿
募集額2000万円。抽選を突破して出走と運もある。陣営が語るように精神面の成長が鍵で、初重賞で強敵相手となるここは試金石。さらに過去に騎乗した北村友一騎手や吉田隼人騎手は「良馬場向き」とコメント。週末の雨模様と馬場状態が気になる。
ストゥーティ
父:モーリス
母:リラヴァティ
母父:ゼンノロブロイ
馬主:キャロットファーム
厩舎:奥村豊
騎手:吉田隼人
募集額3200万円のクラブ馬。この馬も抽選突破組の一頭。チューリップ賞(G2)で3着、桜花賞7着と重賞経験も豊富。母リラヴァティはローズSで3着に好走しているのもポイントが高い。鞍上の吉田騎手は、秋華賞はソダシに騎乗するため今回のみの騎乗だが、同馬が秋華賞出走のためには3着以内が必要なだけに力が入る一戦。
スパークル
父:エピファネイア
母:アイズオンリー
母父:ネオユニヴァース
馬主:R.アンダーソン
厩舎:中内田充正
騎手:藤岡佑介
2019年のセレクトセールにて3600万円で落札。2勝クラスを勝利しており、メンバー唯一の3勝馬でもある。収得賞金1500万円で秋華賞は抽選の可能性も残しているため、ここは勝負のレースだろう。ただし鞍上は川田将雅騎手から藤岡騎手へ乗り替わりとなるのが、プラス要素とは言えないところ。ちなみに中内田厩舎は現在2年連続でローズSをノーザンファームの馬で勝利しており、3連覇がかかるレースだ。
レアシャンパーニュ
父:エピファネイア
母:ロゼシャンパーニュ
母父:ゼンノロブロイ
馬主:大塚亮一
厩舎:音無秀孝
騎手:浜中俊
抽選を突破しての出走。2走前で上がり32秒7の脚を使うなど強烈な末脚が武器。ただし稍重だったレースで完敗しており、陣営も渋った馬場を敗因に挙げていたため、ここも当日の馬場状態が鍵。さらに牝系は短距離向きで初の2000mもマイナス。
ローズSに出走するノーザンファームの6頭をチェックしてみた。紫苑Sで1~3着を独占したことからも、ノーザンファームのボックス馬券が最も魅力的だが、あえて順位をつけるなら以下の通りとなる。評価ポイントは【鞍上・血統・厩舎・馬主・価格】である。特に「ストゥーティ」と「スパークル」は馬券的にも必ず押さえてほしい穴馬候補。
1番手 アンドヴァラナウト
2番手 アールドヴィーヴル
3番手 ストゥーティ
4番手 スパークル
5番手 レアシャンパーニュ
6番手 コーディアル
■セントライト記念
オーソクレース
父:エピファネイア
母:マリアライト
母父:ディープインパクト
馬主:キャロットファーム
厩舎:久保田貴士
騎手:C.ルメール
募集額8000万円の高額馬。父と母はキャロットファームが所有していたG1馬で期待は当然大きい。問題は昨年暮れのホープフルS(G1)以来というローテーション。実績が示すように素質はありのものだが、2週連続で追い切りは相手馬に遅れている。賞金的には菊花賞の出走は問題なさそうなので、休み明けを考えれば軽視していい存在。
グラティアス
父:ハーツクライ
母:マラコスタムブラダ
母父:Lizard Island
馬主:スリーエイチレーシング
厩舎:加藤征弘
騎手:松山弘平
2019年のセレクトセールにて2億3000万円で落札された馬。デビューから2連勝で京成杯(G3)を制したが、皐月賞6着、日本ダービー8着とG1では足りず。賞金的に菊花賞の出走は大丈夫なので、ここで目一杯の仕上げは考えにくい。姉レシステンシアは先週のセントウルSを快勝と追い風はあるが。
ルペルカーリア
父:モーリス
母:シーザリオ
母父:スペシャルウィーク
馬主:キャロットファーム
厩舎:友道康夫
騎手:福永祐一
キャロットファームで募集額1億2000万円。兄がエピファネイア、サートゥルナーリアならば当然の評価か。京都新聞杯(G2)で2着となったが、日本ダービーを回避してここにかけてきた。福永騎手は「硬い馬場が得意な血統ではない」と語っており、パンパンの良馬場よりは雨で多少柔らかくなった方がいい。賞金的に3着以内で権利を取りたいが、目標にされる展開もマイナスか。
レッドヴェロシティ
父:ワールドエース
母:トップモーション
母父:シンボリクリスエス
馬主:東京ホースレーシング
厩舎:岩戸孝樹
騎手:M.デムーロ
2018年のセレクトセールにて2700万円で落札され、クラブでは3600万円で募集された珍しいワールドエース産駒。青葉賞(G2)3着の実績はあるが、今回の方がはるかに強力メンバー。とはいえ今回のノーザンファーム生産馬で唯一菊花賞の出走が賞金的に厳しい馬。ゆえに勝負気配は高く穴に一考。
ヴィクティファルス
父:ハーツクライ
母:ヴィルジニア
母父:Galileo
馬主:G1レーシング
厩舎:池添学
騎手:池添謙一
3600万円で募集されたクラブ馬でスプリングS(G2)の勝ち馬。ただしそのスプリングSで負かした相手で、その後オープンを勝利した馬はゼロ。相手に恵まれた感も。開幕2週目の馬場を考えると、外を回る乗り方だと届かなそう。得意の中山でも割引が必要だ。
1番手 ルペルカーリア
2番手 レッドヴェロシティ
3番手 オーソクレース
4番手 グラティアス
5番手 ヴィクティファルス
オーソクレース、ヴィクティファルス、グラティアスの3頭は菊花賞の出走が賞金的にクリアできており、休み明けを考えると本番に向けた叩きの意味合いが大きい。一方でルペルカーリアとレッドヴェロシティは、ここで権利を取らなければ菊花賞の出走は抽選対象になる可能性が高い。特にルペルカーリアは募集額1億2000万円で、とりあえず菊花賞に出走すれば面目躍如といったところ。そういった思惑も加味すれば、同馬を1番手に評価したくなる。レッドヴェロシティは2勝目が今回と同じ中山芝2200m。得意条件でミルコが騎乗となれば、面白い存在となるはずだ。
(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。