🐡 新居浜市雑談

　私は…………。
　これに続く言葉が思いつかない。今何を考えているのか、何を想像しているのか。今私が何を思っているのかさえ、上手く言語化できない。
　映画を観終わった後に、印象的だったシーンを友達同士が語り合っている。同じ映画を観たのに私はその会話に参加する事ができない。
　カラオケに行って、他の友達がつい先日出たばかりの新曲をスラスラ歌えるのに、私はいつも同じ曲を、曲名も歌詞もあやふやで、愛着すらもない曲を歌う。
　そんな学生時代によく遊んでくれた友達とも、会わなくなって久しい。
　社会人になって、家と職場を往復する日々。まだ日も昇らない早朝に家を出て、蛍光灯が青白く照らすオフィスで日没まで過ごし、また家へ戻る。それだけの日々。
　「あ〜、死にたいな…。」
　幼い頃から常に劣等感に押し潰されてきた私の口癖は、いつの間にか「死にたい」になっていた。
　『去年7月にJR新宿駅構内で起きた無差別殺傷事件で東京地裁は今日、被告に刑事責任能力はないとした一審の判決を覆し、被告の精神疾患は軽度なもので刑事責任能力に問題は無いとする検察側の主張を全面的に認め、無期懲役の判決を言い渡しました。被告側はこれに対し控訴する意向を示しており、判決の行方は来年以降に持ち越される見込みです。』
　テレビから去年起きた事件の判決のニュースが流れている。そういえば事件を起こした彼も供述で『自分に劣等感を抱いていた』とか『死刑になりたかった』とか言っていた気がする。
　私もいつか気が狂って人を殺すようになってしまうのかな…。このままだと得体の知れない私という存在が制御できなくなって、無意識に暴れ回るようなそんな気がして、気分が悪くなった。
　「おーい！飯やぞー！」
　家いっぱいに父の声が響き渡る。
　「…なんで30にもなって実家に住んでるんだろ。」いくら大人ぶっていても、こういう現実に気付かされる瞬間が本当にしんどい。うるさいので仕方なく台所へ行った。