一関学院・岩渕 スノボ世界初最難技決めて金獲るぞ
[2017年11月23日12時53分 紙面から]
練習で大技「フロントサイドダブルコーク1080」に挑戦する岩渕
冬季五輪の日本人最年少金メダリストになる−。スノーボードのスロープスタイル女子の岩渕麗楽(れいら、岩手・一関学院1年=キララクエスト)が、来年2月の平昌(ピョンチャン)五輪に向け、勝負に出た。デビュー戦だった今季開幕戦の9月のニュージーランドでのW杯で4位入賞を果たし、五輪派遣基準を満たした。15歳ながら3月に全日本選手権を制覇したルーキーは、大技の1つ「バックサイドダブルコーク1080」をすでに習得済みだが、成功すれば世界初という難技「フロントサイドダブルコーク1080」にも挑んでいる。
中1から慣れ親しんだ宮城・村田町の練習場「東北クエスト」で、岩渕は晴れ舞台に向け汗を流していた。6月から11月まで国内拠点としている同施設では、取材日の11月上旬が年内の練習最終日。取材では時折あどけない表情を見せたが、世界での初陣の話になると顔つきが変わった。
岩渕「入賞できたことはうれしかったが、納得いく滑りができなかった。やりたい技があったのに、攻めきれなかった」
決勝の1本目にフライングし、2本滑れるはずが1本だけになってしまった。不完全燃焼だった。ただ、平昌は近づいている。飛躍に向け、5月にアメリカのスキー場で「バックサイドダブルコーク1080」を成功させた。難易度の高さから危険も伴い、レスキュー隊の電話番号を調べてから臨んだという。この大技に満足することなく「バックサイド1個だけじゃ足りない」と漏らした天才少女は、さらなる高みを目指した。
[匿名さん]
■ 「フロントサイドダブルコーク1080」。
世界でまだ誰も公式戦で決めていない難技だ。バックサイドとの違いは回り方で、こちらは左回り。岩渕は10月、村田町で成功させた。中1の頃、クエストアカデミーの佐藤康弘コーチ(42)から指南された大技を「久しぶりにやったら、うまくできた」と言ってのけた。雪山ではないとはいえ、母恵里香さん(44)から連絡を受けた父和弘さん(43)は「信じられない」と、娘が急成長する加速ぶりに、驚がくする。
4歳の頃、スノーボードを始めた。緩い下り坂でスケートボードで遊んでも怖がらない娘を見て、父は「親バカかもしれないが、この子才能があるな」と思った。岩渕は保育園の卒園式の演台で「スノーボードのオリンピックに出たいです」と話した。小6時の「何をやってもうまくいかない時期」を乗り越え、13年に規定より1年早く全日本スキー連盟の強化指定を受けた。世界ジュニア選手権で準優勝した昨季は、全日本選手権も制覇。着実に成長してきた。
成長に連れ、極めて多忙になってきた。そんな日々でも、遠征先で勉強は欠かさない。世界に主戦場を移した今でも、学校の試験期間で早く帰宅し、家族に手作りの夕食を振る舞う。時間の使い方のうまさは、競技にも生かされている。
岩渕は「腰が普通の人よりもそり腰で、衝撃を受けたら、腰痛になってしまう」と中学時代から腹筋を鍛えている。高校からは地元のジムに平日の放課後、毎日1時間半通う。「体脂肪率が2・5%ほど落ちました。(トレーナーに)見てもらうようになってから、前よりも腰が回るようになった」と成長につなげた。
「平昌では金です」。冬季五輪史上、日本人最年少金メダリストは98年長野五輪のスピードスケート男子500メートルの西谷岳文で当時19歳1カ月。その最高の栄誉を真っ先に知らせたい人物は、両親ではなかった。「妹です。途中まで一緒にやっていたけど、中学で部活に入ってやめてしまった。一緒にやりたい」。妹の璃音さん(中2)は中学入学後、スノーボードから離れた。家族でスキー場に行く機会も激減したという。妹に再びこの世界に戻ってきて欲しい−。その願いもかなえるべく、決戦に挑む。【秋吉裕介】
[匿名さん]