🪓 ﾒﾙﾃｨﾌﾞﾗｯﾄﾞ攻略･地方

『メルブラ学園の林間学校』

青子「はーい、皆揃ったわね。それじゃあ張り切っていくわよー」
　蒼崎の掛け声に、能天気なクラスメートは同意の声を一様に上げた。
　今日から夏休み期間中を利用しての林間学校が始まる。
　有志と一部の教師で敢行されたイベントであるが、何だかんだうちのクラスの連中は全員参加していた。
七夜「やれやれ、随分と楽しそうなことだな」
軋間「そう言いながら、しっかりと参加しているな」
七夜「他にすることもないんでね」
　少しばかり痛いところを突かれたが、今更気にすまい。
　旅は既に始まったのだ。

————バス内

七夜「小腹が空いたな、あんぱんを食す」
軋間「こんなところまで持って来てるのか。次のインターで弁当が配られるそうだぞ？」
七夜「その六銭、無用と思え。あんぱんを食す」
軋間「あんぱんだけで食傷にならぬか？」
七夜「飽きないな」
　隣の座席に座り呆れる軋間を尻目に、俺は唯一の荷物である鞄からあんぱんを取り出した。
　本当は牛乳もあるといいのだが、流石に携帯する牛乳というのもうまくない。
七夜「さて、次のインターまで眠るとするか」　　
　あんぱんで軽くを腹を満たすと、心地よい眠気がやってきた。
　俺はそれに素直に従い瞼を閉じる————が、周囲は俺の行動を許容してはくれなかった。
琥珀「それでは皆さーん、カラオケ大会が始まりますよー！」
　突然、琥珀の耳障りな大声がマイクで相乗され響き渡る。
　その煩さから思わず反射的に身を起こした。
七夜「……眠い……まったく、人をおいそれと起こすなという」
　俺が恨みがましい視線を琥珀に送ると、それを遮るように前の席に座っていたアルクが立ち上がった。　
アルク「はいはーい、カラオケってなに、琥珀？」
　片手を挙げ、教室に質問するかのように言った。
　カラオケを知らない、か。
　普段の様子からは想像もできないが、実はこいつかなりの箱入りのお姫様だっていう話だしな。
七夜「カラオケを知らない奴もいるんだ、ここは中止して大人しくトランプでもやっていろ」
　それに乗じて俺も琥珀に声を投げた。
　正直、カラオケなどという姦しい状況は、興味のない俺にとってみれば不快以外の何者でもない。
志貴「おい七夜、ちょっと待てよ。やりたい人もいるんじゃないか？」
七夜「これは参加しなければいいというものでもない、車内にいる以上は嫌でも聞かされる」
軋間「確かに、人によっては迷惑だな。俺はどちらでも構わぬが」
　俺達のやりとりを見て、当の企画本人がマイクで口を挟んでくる。
琥珀「じゃあいいですよー、私だけ歌ってますから」
七夜「は？　お前何を言って……」
　刹那、琥珀はマイクのボリュームを最大限に引き上げ、口から空気を多量に吸い込む。
琥珀「ボエ〜」
　パンッ
　鼓膜が弾ける。
　一瞬にして意識が吹っ飛ぶ直前、周囲の人間も同様に耳から血を飛散させていく光景が目に映った。
七夜（しかし下手だね……どうも）

>>127のつづき

————バス内　翡翠視点

琥珀「聞いてくれないなら、どうぞ寝ていてください」
翡翠「姉さん、皆さんおやすみになられてしまったようですが」
　私は前もって姉さんに渡されていた耳栓を外しながら、淡々と報告した。
琥珀「それならそれということで、翡翠ちゃん、二人だけでやろっか」
　嬉しそうに手をとってくる姉さんに、私は少し動揺した。
　気にかけてくれるのは嬉しいけれど、流石にこれはまずいと思う。
翡翠「姉さん……私はいいです。それより、先ほどから気になっているのですが」
　ちらりと、私は姉さんから視線を外して、運転席に目を向ける。
翡翠「運転手のネロ先生が、体のあちこちから血を噴き出して昏倒しています」
琥珀「大変！　出血熱にでも感染した？」
翡翠「多分、姉さんの歌で先生が懐で飼ってる動物達も揃って沈黙したものと思います」
琥珀「なあんだ、よかったね翡翠ちゃん。私、ウィルスは作ってもワクチンは作らない主義なの」
　なんともまあ、私は素晴らしい姉を持ったものだ。
翡翠「それで運転手が気絶しているということは、姉さん、どういうことかわかります？」
琥珀「やだ翡翠ちゃん、そんなの簡単よ。アクセル全開のまま運転放棄されたんだから……」
　そこまで言って気づいたのか、姉さんははっとして、正面の窓から外を見る。
　見事な急カーブがそこには迫っており、直撃はもう免れなかった。
琥珀「あ、あややー……」
翡翠「無様です、姉さん」
琥珀「ひ、ひすいちゃん、おちついてるけど、どうして？」
翡翠「私にはコマンド入力完成から硬直解除まで完全無敵の暗黒翡翠拳がありますから」
琥珀「そ、それなら私にもチャイナが！」
翡翠「壁に当たれば反撃確定ですので、その後の衝撃は直撃でしょうね」
琥珀「そ、そんな〜」
翡翠「他の皆さんはダウン中ですので無敵です……では、暗黒翡翠流！」
琥珀「きゃーっ！」

　どっがああああああん！

————第一日目　ＡＭ１０：１６　某山中にてバス大破　

そのうち続きます
先日>>114~117ではその方が入りやすいかと思って台詞だけ書きましたが
>>126の意見を取り入れて以降一人称の状況描写も書いていきます