あるとき、わたしは、このように聞いた。
ある日のこと、仏陀は、サーヴァッティの、
ジェータ林にある、アナータピンディカ園で、
集まって来た、比丘衆に、このように説かれた。
ある比丘が、このように仏陀に尋ねた。
「尊師よ、地獄界とは、如何なる世界ですか。
尊師よ、わたしのために、比喩を用いて下さい。」
「喩えるなら、比丘よ、罪人が捕えられて、
王の眼前に引き出されて、刑罰を受けていた。
生きないよう、死なないよう、何度も殺される。
朝に、百回、刀で刺したら、どうなるだろうか。
昼に、百回、刀で刺したら、どうなるだろうか。
夜に、百回、刀で刺したら、どうなるだろうか。」
「尊師よ、只の一回だけ、刀で刺されても、
それは、相当な苦悩が、生じることでしょう。
ましてや、それを三百回とは、想像が付かない。」
そして、仏陀は、拳大の小石を拾って、言った。
「この石と、あの山では、どちらが大きいか。」
「尊師よ、言うまでもなく、あの山でしょうか。」
「比丘達よ、刑罰の苦悩と、地獄の苦悩では、
まさしく、これぐらいの、違いがあるのである。」
「比丘達よ、地獄の獄卒は、五つの刑罰を行う。
第一に、大きな釘を使い、五体を突き通していく。
第二に、大きな斧を使い、四肢を切り落していく。
第三に、大きな火の山を、何度も上り下りさせる。
第四に、大きな釜に入れ、身体を煮て崩していく。
第五に、大きな壁の中で、業火で追い回していく。」
「比丘達よ、彼らは、激しい苦痛を受ける。
結局、地獄の苦しみを、言葉で表現できない。
しかも、悪が尽きない限り、その命は尽きない。」