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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
#198
前回は>>197


「っ!? 誰!?」

一瞬で自らの醜態を取り繕って侵入者を凝視する怪夜の支配者。
そこに語りかけるは、奇しくも黒一色の人物だった。

「貴方……どうしてここに……」
「ようやく辿りついたよ。黒幕は君か、白いレン。
 白いのに黒幕、とは洒落にもならんね。こりゃ。面倒だから白レンでいいよな?」

存在するはずの無い、好きな人のもう一つの顔。七夜志貴がそこで笑っていた。

「丁度勝負もついたようだね、レン。全く、自分の姿なんか見ていて気分が悪いだけだろうに。
 容赦無く殺してしまえば、いいんじゃないかな?」
「貴方は私によって生み出されたのよ……それなのに、私を殺すつもりなの!?」

厳しく問う白レンに対し七夜はやれやれ、と首を振る。

「違うね、白レン。元々俺は遠野志貴の中に存在していた。まぁ存在していただけなんだがね。
 折角気持ち良く亡者共との殺し合いを満喫していたってのに無理矢理起こされて、ご立腹なんだよ。
 いい加減眠い。そろそろ、お休みの時間だ。お姫様」
「貴方も分かるはずでしょう!? 閉じ込められたまま出られない私の気持ちが! それなのに……」

そんな必死な、『子供』の言葉を。七夜志貴は容赦無く的確に殺していく。

「オマエの気持ちが分かる? 寝言は寝てから言うんだな、白レン。
 もとより他人の気持ちを理解できるなんてこと、あるわけがないだろう?
 それに、俺は生粋の殺人貴なんでね。起こされた時点でその要因は殺す、そう決めてあったんだ」
「ぅっ……そう。貴方も私を否定するの?」
「否定も肯定もしないね。オマエなんかに興味は無い、ただ殺すだけだ」

決定的な一言だった。この時点で、再び白レンは子供のような暴走を。

「やめて! それ以上、私を苛めないで……」

倒れた黒からかぼそい声が響く。

「!? レン?」
「おやおや。随分と他人想い、いや、自分想いのいい子じゃないか。
 それをそんなにしてしまうなんて、イケナイ子だな、白レンは」
「……貴方なんかに何がわかると言うの!」
「おっと。そうだよ、所詮人の気持ちなんて判るはずのないもの、それでいいんだ。
 もう、うんざりだよ。その一人芝居には。つまらなすぎて欠伸が出る。
 いい役者と言うのは、一人だろうが客をつまらなくさせないんだぜ?」

すっと、七夜の姿勢が下がる。

「さぁ、殺しあおう」

先程とは随分違う、あまりにもただ直接的な役者の台詞で、再び戦いが始まった。


「はっ、ふん!」
「くっ……」

素早い動きを辛うじて氷で牽制する白レン。それを凌駕する動きで避ける七夜。
最早勝負ともいえないそれは、しかし長く続いている。
追いつめられ、苦し紛れに出す氷の樹が伸びる。

「当たって!!」
「よっと」

ステップ、着地も軽く。再跳躍。
白レンには氷を出現させて、それが消えるときに数瞬の隙が出来る事を七夜は既に見抜いている。
五度目の決定的場面。しかし七夜は勝負を決めるのを拒むかのように。

「しっ!」

攻撃を紙一重で外していた。どうにか退がる白レンを余裕で見送って。
肩を竦めて言い放つ。

「しかし、下手だね。どうも。殺しあってる気がまるでしないよ。
 オマエじゃ役不足だ、白レン。来世あたりからやり直すことをおススメするよ」
「うるさい!」

無闇に飛び込んでくる白レンを軽くいなす。

「私はレンになるんだ! 私はレンになるんだ!!」
「分からない奴だなぁ。オマエ一人じゃ無理だっていい加減分からないのか?」
「私は一人だ! 私はレンだ!!」

うわ言のように繰り返す。七夜はそれを。何故か寂しげな視線で見守っていた。
そして。

「もういいよ、オマエ。死ね」

無情な宣告。そして告げられるのは必殺の。

「極死」

上がる腕に、雪原が更に凍りついた。
氷点下なんて目ではないほどのその怖気に、とうとう白レンの無謀な心もくじかれる。

「誰か、助けてっ!!」

その願いは虚しく雪原に響き渡った。


[ 怪夜舞台〜the night actor〜三幕 ]
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