◆起こるはずのない「医療崩壊」日本で起きる真因
2021/1/14 東洋経済オンライン
森井 大一 :大阪大学医学部附属病院感染制御部医師
■なぜ日本だけが医療崩壊の危機に瀕しているのか
最近になって、欧米各国からもようやく逼迫する医療現場の声が発せられるようになってきてはいるものの、
流行の規模および医療への負荷のかかり方から見れば、欧米は非常に“我慢強い”ように見える。
先日、アメリカ在住の医師・研究者等とオンライン上で意見交換する機会があったが、
日本よりもはるかに多くの患者を抱えながらも救急も手術も平時とほぼ同じように行われているとのことであった。
なぜそのようなことが可能なのか。
「欧米各国ではもともとの医療提供体制の余裕が大きいのではないか?」と考える方もおられるかもしれないが、そうではない。
次の図をご覧いただければわかるとおり、人口当たりの医師数は確かに日本よりも欧米のほうが少し多い。
しかし、病床数や看護師数を含めて総合的に見れば、もともとの医療提供体制に関して日本だけが劣っているということは決してない。
ではなぜ、日本だけ比較的患者数が少なく、医療への負担が小さい段階で「医療崩壊」してしまうのだろうか。
全体で見ればまだまだ足りているはずのものが、足りなくなる理由はおそらく1つしかない。
引き受け手が“一部に”限られているのだ。
160万の全病床はおろか、急性期・高度急性期を名乗る70万弱の病床のうち、
ほんの一部しかコロナを受け入れる用意がない。
現段階での確保病床をすべて足し合わせても急性期・高度急性期病院の4%にすぎない。
これでは、これからさらに増えることが確実な患者を受けきれないことは誰の目にも明らかだ。
コロナの入院を引き受ける病床を増やすしかない。
ではどこで増やすか。以前から引き受けている医療機関でこれ以上の病床を上積みするのはかなり困難だ。
たとえベッドがあっても、医師・看護師の人員が追い付かない。
通常診療への影響もすでにかなり受けている。