貧者の一灯
お釈迦さまの話に
感動した貧しい少女の難陀(なんだ)は、
ぜひ、自分も布施をしたい、と懸命に努力し、
わずかなお金を手にすることが出来たのでした。
これで会場を照らす灯火の一灯分の油を買おうと油屋に走るも、
お金が足りませんでした。
・・・・・・・・・・
「どうにかならないでしょうか。
今日一日求め歩いて得たお金なんです。どうか……」
店の土間に膝をつき、頭を下げたが、主人はまだ渋っている。
「見てのとおり、うちも貧しい商いなんだ。
分けてやりたいのはやまやまだが、お金がないのでは仕方がないよ」
「無茶は承知です。
お金が足りないなら、できることを何でもさせていただきます」
じっと聞いていた油屋は、
「釈迦牟尼(しゃかむに)というお名前は私も聞いたことがあるよ。
だが、そんな大切なことを教えていられる方とは知らなかった。
灯火を施したいのだね
分かった。私も一緒に布施させてもらおう」
と、手際よく油を容器に分け、捧げ持って彼女に手渡した。
あまりのことに難陀は、一瞬戸惑ったが、事態をのみ込むと、
パッと心が明るくなった。
心から店主に礼を述べ、恭しくその油を押し頂いて通りに飛び出した。
西の空には太陽が、すでに半身を沈めていた。
翌朝、精舎では、仏弟子の目連(もくれん)が灯火の後始末をしていた。
大方の火は油が切れて消え去ったが、
中に一つだけ、夜明けを迎えてもなお、明々