謹んで復命する，
心まれすけ，
乏しきをもって明治三十七年五月
第三軍司令官たるの泰明を拝し
旅順要塞の攻略に任じ
六月けんざんを抜き七月敵の逆襲を撃退し
ついでその前進陣地をこうかんし
もって敵を本防御線内に圧迫し
我が海軍の有力なる共同動作とあいまじて
旅順要塞の高位を確実にせり
事後正攻法によって砲撃を続行し
逐次要塞を攻撃し
十一月下旬より十二月上旬にわけて
二百三高地を力攻して
ついにこれを奪取し
港内にきっぷくせる敵艦を撃沈せり
まさに要塞内部に突入せんとするにあたり
三十八年一月一日
敵将こうをこい
ここにこうじょう作戦の終局を告げたり
これをようするに本軍の作戦目的を達する終えたるは
陛下の身いつと上級統帥部の指導ならびに
友軍の協力とによる
思考して作戦十六ヶ月間
我が将卒の常にけいてきと健闘し
忠勇義烈
死を見る事きするがごとく
剣に倒れ
弾に倒る者皆
陛下の万歳を歓呼し
欣然と瞑目したるは
死んでこれをふくそうせざらんと
ほっするも
しかるにかくごとき
忠勇の将卒をもってして
旅順の慕情には
はんさいの超月日を要し
多大の犠牲をきょうじたるは
身が終生の遺憾にして
陛下へお詫び申しあげます
陸軍大将 乃木希典
