大抵の人間は社会的地位を確保することによって満足を得ようと願っている。
それは、彼らがつまらない無名の人間で終りたくないと思っているからだ。
社会というものは、立派な地位を占める人間はきわめて丁重な扱いを受けるが、一方、社会的地位をもたない人間はただ酷使に甘んじなければならないようにつくられている。
それ故、だれでもみな、社会的地位や家庭内の地位を欲し願っている。
しかも、その地位は他人によって認められなければならない。他人が認めるのでなければ、それは決して地位とはいえないからだ。
こうした地位や威信、権力を求め、何らかの方法ですぐれた人間として社会に認められたいと願う切々たる気持は、いいかえれば他人を支配したいという欲求である。