前回は
>>186
そう言いつつも薄く目を開ける。体は未だ動かないままだけれど。自分はまだ死んでいないから。
相手に隙ができるならそこを突いて……逃げる!
黒鍵を構えたシエル先輩がもう目の前だ。その気になれば、刹那のうちに殺されてしまうけれど。
ぐっと拳を握って。ありったけの力を込めて地面をひっぱたいた。
やけくそとも言える叫びを放ちながら。弓塚さつきは最期になっても抵抗し続ける。
「あぁーーーーーー!!!」
「くっ!?」
意表を突かれたシエルは飛び退る。その一撃は地面を打ち砕き、衝撃で周囲にも破壊をもたらしていた。
ようやく見えた一筋の光。しかし。
「あれ? 体が、動かない?」
先程のダメージの影響ではない。それくらいなら、たとえ足が千切れようと動いてみせる。
不屈の精神に、血を飲まずに無茶な活動を続けた体は耐え切れず。
もはやシエルにとどめを刺されるまでもない、完全な死に体だった。
「驚きました……まだそんな力が残っていたのですか」
「えへへ……でも、もう駄目みたいです」
「そうですか」
どこまでも無表情なシエル先輩に、せめて笑いかけてみる。黒鍵が、構えられた。
「志貴君をよろしく、先輩」
返事などなく。無情に黒鍵が突き出された。