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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
#178
うわ、読みづらい……訂正しておきます。>>177が前回です。


違和感は空気だけではなかった。人が居ないのだ。生気のない、まるで影絵の三咲町を秋葉は行く。
その威風堂々たる様は正しく黒の世界を統べる紅の女王……とりあえずその目的地は一つだった。
暗い街に放たれる殺気、隠されてもいないそれをまず潰す。
彼女に分かるのはこの夜がおかしいという事だけ、その原因たるものなど知る由もない。
だからこそ、手当たり次第にいくしかない。立ちはだかるものは、すべて『略奪』する。
それが今の遠野秋葉なのだ。

騒ぎの音が聞こえる。自分と同じようにこの夜の異変に気付いた者があったのだろう。
彼女自身にも異変に気付きそうな人物には心当たりがある。
白くて五月蝿いあの女だろうか? それともあの憎憎しい『先輩』だろうか?
どさくさに紛れて、潰してしまえばいいのかもしれない。そんな大胆な考えさえ浮かんでくる。
ともあれ、そんな瑣末な出来事に足を速める必要はない。
ゆっくり行ってやればいい、私だってむやみな戦闘を望んでいるわけではないのだから。
そんな彼女の考えを肯定するかのように、しばらくして戦闘音がやんだ。殺気は、もう近い。

そして、公園を出て路地の奥へと入ろうかという時。それは姿を現した。

「今夜は良い月が出ているじゃないか? 殺戮にはぴったりだ」
「あなたは……っ!」

黒い夜に似つかわしい黒の学生服。鋭い目つき。そしてなにより。
その男は、兄に瓜二つだった。
殺気を隠そうともせずに立つそれは、しかして間違っても彼女の兄たる遠野志貴ではありえなかった。

「やぁ、秋葉。お前もこの夜に惹きつけられて来たのかい?」
「!! 馴れ馴れしく私の名前を呼ばないで頂戴! 何者ですか貴方は?」

語気荒い問いにも全く動じることなく兄に似た男はくつくつと笑いを零す。
それが秋葉には目障りで仕方がなかった。

「おっと、待て待て。そんなに物々しく警戒するもんじゃない。仮にもお前はお嬢様だろう?」
「いいから、私の質問に、答えなさい! それとも、力づくで答えたくなるようにしなければ
 なりませんか!?」
「失言だったか……思わず名前を呼んじまった」

ゆらり、と男は身を揺らす。その手には、短刀。
武器を見た秋葉は臨戦態勢へと突入し、それが彼女の反転を加速させていた。
沸々と戦闘衝動が、沸き起こる。

「一つだけ、警告しておく。逃げるなら、今のうちだ。この夜は絶対的に普通なんかじゃない。
 なんせ、俺が出てきちまうんだからな」
「お答えなさい!!」
「ふん。折角の警告なんだがね? 死にたくなければとっとと帰りな、お譲ちゃん」

その一言で秋葉のストッパーが飛んだ。走り寄りながら宣戦を布告する。

「名乗らないと言うのなら、その名前ごと全てを奪いつくして差し上げます!」
「やるのかい? ま、やるというなら容赦はしないがね」

怪夜に赤と黒が踊った。


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