【県立姶良病院・５代目院長・山畑良蔵の人生 ③】
こうして、長年の姶良病院勤めで、良蔵は完全に人間としては壊れた。
「壊れた」良蔵だったが、長年に渡り居座ったおかげで今や県立病院の院長となり、県庁では「部長」待遇である。自分を姶良病院に追いやった鹿大精神科も今や良蔵を「臨床教授」にしていた。
今や誰も良蔵をバカにする者はいない。
いや、内心では相変わらず良蔵をバカにしてはいたが（何しろあのルックスである）、表向きは「センセイ」「院長」として遇してくれる。
そして遂に地元紙・南日本新聞にまで美談調の姶良病院の宣伝記事を書かせる事に成功した。
そこにはカッコよく「良心的」な「名医」として良蔵も描かれているのである。
思えば、良蔵を恨んだ患者には消火器の消火液を吹きかけられ、ヤクザ（小桜一家）の患者には脅され土下座し命乞いをし、辛い目にも遭ってきた。
だが、それもすべて心の奥底に隠してきた。そうしたストレスの解消としてまた別の患者を誰か標的にして投薬と注射で痛め付けてもきた。
子供の頃から何処に行ってもバカにされてきた良蔵だったが、こうして還暦過ぎにして、やっと世間に自分を認めさせる事に成功したのだった。
代償に周囲からの軽蔑と（皆、良蔵の事は今でもバカにしているがただし表向きはそれを出さないだけ）、患者達からの恨みを背負いつつ・・・。
しかし、長年隠し続けて生きて来た数々の醜態をネット上で次々と晒されてしまい、本来の姿が徹底的に暴かれてしまい、今では日本中からの笑い者になってしまった。
完
