水上バイクで現場に戻ると、湖面に瑛大君が浮いていた。息がないことはすぐにわかった。近くで足を負傷していた妻らを岸まで運び、救急車が来るまで夢中で妻に声をかけ続けた。瑛大君を助けに戻りたかったが、付き添いで病院に行かなければならず、胸が張り裂けそうな思いで中田浜を後にした。
瑛大君と対面を果たしたのは数日後。会津若松署の霊安室だった。
横たわった体はやわらかいのに冷たい。「もっと触りたい、抱きしめたい」と思ったが、自分の体温で体が傷んでしまいそうで手が止まった。「自分が家族を連れて来なければこんなことにはならなかった」と後悔した。