前回は
>>215
「しかし、下手だね。どうも。ただで血をやるなんて、どうかしてるよ。俺は」
その割には全く、言葉に後悔は見られない。さつきを助けて。
どうやらあの先輩には自分の正体、と言うより素性はばれていたようだが。何も言われなかった。
「全く、志貴の周りには冗談じゃなくお人好しが多すぎる。
俺まで中てられたらどう責任を取ってくれる……殺すか」
不敵な笑みが不穏な路地を抜け……ることなく。びたりと立ち止まる羽目になった。
黒に浮かぶ紅……彼の妹、いや、文字通り『義妹』がこちらに歩いてきている。
「秋葉……か? 俺の血がぞくぞくするくらい反応してるってことは軋間と同じ……
紅赤朱。はん、志貴が知ったらどうなる事やら」
どうせこんな夜だ、あのお節介の権化のような自分は見回りと称した自殺行為に励んでいる頃だろう。
「出遭わせるわけには、行かないよなぁ? 俺が出てない間に遠野志貴が殺されちゃ俺も死ぬ」
そんな、建前が口を突いて出た。中てられた事、確定である。何せ七夜志貴は。
あの異形を見てもなお、妹を殺したくないなんて甘い思考を繰り広げているのだから。
「甘いよなぁ……あのお節介の血くらいは甘いんじゃないか?」
それは自分の血でもある。そんな自虐を口の端に乗せつつ。夜の役者は優雅に挨拶を交わした。
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