前スレ726です。
この流れで自らも発火剤になれることを祈りつつ!
膠着状態が続いていた。
「ぬうん!」
「ふっ、ハッ・・・!」
「どうした、先程から逃げてばかりだが?」
クッ・・・言ってくれる。まともに一撃喰らえば俺なんかじゃひとたまりも無い。
良くて骨に皹、下手をすれば——即死。
「そら!」
前進しながらの大振りの裏拳。
「、っっと・・・!!」
幸いなのは技が大振りで隙が大きい事。上手くかわせれば隙を突ける。
「そこだッ・・・!」
渾身の力で突進、短刀を突き刺す。
「小賢しいッ!」
「がっ・・・!!」
振るわれる豪腕。弾き飛ばされる身体。辛うじて受身を取る。
なんて馬鹿力・・・長期戦に持ち込まれてはこちらがかなり不利だろう。
「どうした、七夜の倅。よもやこれだけという事はあるまい?」
「そんな訳無いだろう・・・!!」
俺はこいつを倒さねばならない。
何故かは解らない。でも、こいつを倒さねば俺は先へ進めない———!!
「行くぞ軋間。俺はお前を倒して先へ行く」
「・・・その意気だ。そうでなくては面白くないからな。
かかって来い、七夜の倅———!!」
軋間の死を凝死する。
殆ど薄くしか見えない。これが紅赤朱の力なのか・・・・!
・・・しかし。
伸ばされた前髪によって隠されている過去に潰された右目、それと同じ右側の頚部。
過去、記憶さえ残っていない誰かによって付けられた傷。そこだけ一際線が濃い。
なら狙うは一点。危険な賭け、だがこれ以外に活路はない———!!
「だァァァ——!!」
駆け出す。ただ首を狙うだけでは相手に読まれる。
走った勢いをそのままにスライディングをかます。
「ぬぅ!?」
流石に意表を衝かれたか、一瞬たじろいだ様に見えた。
「小癪、な・・・・」
そのまま跳ね上がるように起き上がり上から下に斬り上げ、更に返す刃で首の線を断つ——!!
「それだけか?小僧」
ハズ、だった。
「な、に」
気付けばヤツは腕を突き出した格好のまま数メートル向こうに。
俺の体はヤツの突き出した腕によって吹き飛ばされていた。
肺に空気が残っていない。頭は胡乱。アバラの何本かは持ってかれただろう。
「が、ふ」
駄目だ。ヤツの鋼のような肉体には届かない。
決定的な隙。そこに致命的な一撃を・・・!!
紅い鬼が歩み寄る。その腕は俺の首へ真っ直ぐと伸びて———
「残念ですが、そうはさせない」
その腕は、何かに絡め取られた様に留まっていた。