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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
合計:
#239
前回は>>238



「はぁっ!」
「ぬん!」

それからの展開は、それこそ人外の戦いだった。
混沌から流出する数多の生物、そのことごとくを爪で蹂躙するアルクェイド。
意に介することなく混沌を繰り出し、自らも隙を見て攻撃を仕掛けるネロ。
傍から見ていればそれは、確実にネロが有利な戦いだった。
事実、アルクェイドは何度も鴉の嘴を受けて、鹿の体当たりで吹き飛ばされている。
しかし。その認識は甘すぎる幻想だ。たかだか動物の一撃程度で、彼女は止まらない。

「喰らいつくせ……!!」

大量の鴉が、放たれる。それは飛び上がって、アルクェイドに狙いを定め。
その一瞬の隙だけで、アルクェイドには十分。
今までダメージを受けつつも詰めてきた距離、それを零にする!!

「行くわよ!」

姿が霞んで消えたと思った時、既に彼女はネロ本体をがっしりと掴んでいた。

「消えなさい!」
「ぬぁっ!!」

その華奢な腕から発されるとは思えない威力で彼女はネロを放り投げる。
そして、空中戦へと突入した。

体勢が不安定な空中、そこでは満足に混沌を開放できず。
ネロ・カオスは自身のみで戦う羽目になる。

「ハァア!!」
「そらっ!!」

ネロがその長い腕を駆使して牽制の一撃を放つ。
その腕をピンポイントで狙って、アルクェイドの神速の爪が二撃。
見事としか言いようの無いカウンターだった。
完全に体のバランスを失い、もはや落ちるだけとなったその体に追撃が入る。

「ぐぅっ!?」
「あはははははは!!!」

先に地上に着地したアルクェイド、そこから叩きつけるような腕の振り。
それを拾うような突き上げでもう一度空中へ。
滞空時間の限りに爪を浴びせて、最後は。
馬鹿みたいな腕の力に遠心力と重力までもが加算された一撃で混沌を地面へと叩き落とした。

「っ!!」
「無様ね」

どうにか受身を取って距離を離したものの、その体は最早ずたずただった。
666あるという命、それが幾ら生き残っているものか?

「ここまでのものとは……」
「ハン……甘く見ないで頂戴。アナタごときとは端から格が違うのよ!!」

再度、突っ込むアルクェイド。しかし、それがネロにとっての絶好の獲物となる!

「その浅はかさを」

すっと、マントが僅かに開けられる。そこから覗く凶悪な瞳と、爪。

「呪うがいい!」

幻想種という最強の混沌が開放される。
その爪は、威力はどうあれ大きさは完全にアルクェイドを上回っていて、回避が不可能に近い。
だから彼女は。

「ひゃはははははは!!」

自らの身長と同じ程度の力の波動で、自分に向かうものだけを見事に相殺しきってみせた。

「なんとっ!?」
「もう十分でしょう? 千年も生きておいて理解できないはずはないわ。

 だから」

最期の宣告が告げられる。

「力の差を知りなさい!! 偽りの月よ!!!」

高らかな宣誓と共に腕が上げられ。
比喩でなく、月が落下してくる。あんなものを受ければ、どんな生物でも粉みじんだ。
まっとうに666居たとしても耐え切れるか分からぬその一撃に。
ネロは逃げることも臆す事も無く立ち向かう。
残った言葉は、誰に宛てられた物か? もはや知ることは無い。

「さぁ、生を謳歌しろ……っ!!」

グォォォォォ!! と獣そのままの叫びを上げて偽りの月へと特攻を仕掛ける。
その体は、人間とも獣とも言い難い、例えて言うなら『ネロ』そのものだった。

無謀にも月に挑んだ混沌は。
その身に『力の差』を思い知らされて散っていった。


[ 朱の月と無謀な獣 Bloodly smile in───2 ]
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