次にこちらに向かってくる黒鍵に狙いを定めるアルクェイド。
だが、彼女はその向こうに見える光景に驚愕する。
速度が落ちていたのは疲労が原因では無かった。
恐るべき瞬発力で、投じた黒鍵を追い同じ速度でこちらに向かってくる相手を見てそれを悟ったアルクェイド。
シエルの手には黒鍵が握られている。
ここで飛んでくる黒鍵を弾けば、致命的な隙が生じる。
正確に相手に向かって返したとしてもおそらく進撃を食い止めるまでには至らない可能性が高い。
かといって避けても確実に動きを読まれるであろう…
相手の行動は寧ろそれを狙ってのことのように思える。
回避は不可能、打つ手は…
アルクェイドの両の瞳が金色に輝く。
「いけぇ!!」
無事な方の腕を地面を擦るように振り上げると、
風が刃となり地面を抉り進んで行く。
「!!」
シエルは反撃を全く予想していなかった。
相手の避ける方向を読み切り、黒鍵を突き刺す事しか頭に無かった。
風の刃は飛んできた黒鍵をいとも簡単に薙ぎ払い、勢いを失う事無く
シエルの元へ向かっていく。
全速で間合いを詰めていたシエルが今度は回避不能。
止まることも出来ず、両腕で防御の体制を余儀なくされる。
目を逸らしてはいけない…
目の前で十字に組んだ腕の合間からしっかりとアルクェイドを見据えようとする。
一瞬隙を作ればそれは即敗北に繋がりかねない。
腕を削り取らんばかりの衝撃がシエルを襲う。
「くっ!」
苦痛に顔を歪めるシエル。
そしてアルクェイドの姿が目の前から瞬時に消えた…
予想した通りであった。
「見えていますよ!!アルクェイド!そこです!!」
上に飛んだのが運の尽き。
腕の痛みを物ともせず、残った黒鍵を上空に投じるシエル。
どう考えても空中では避けることの出来ないタイミング…
フッ…
刺さったはずである…
だが、音も無く黒鍵は目標をすり抜ける。
回避は絶対に無理だったはず…
「惜しかったわねぇ、残像よ。」
シエルが聞き慣れたその声を背後から耳にした時には、自分の体は中を舞っていた。
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