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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.630572
合計:
#620
殺人鬼‐1
 
夕焼けで染まる坂道を一人歩く。
他に通行人は無く濁音を吐く車も無い。いつも通り閑静で、けれど生活臭のある独特な一道路。
秋葉と共に帰るようになってからはあまり無かった、無音の帰路だ。今日は我が儘を言って一人学校に残り、教室の隅で外を眺めていた。
「ん……」
何でもない日常。軽く伸びをして視界を上げる。
日中程ではないにせよ感じる閃光に目を細めながらも、映すのは太陽。今日は本当にこればかり見ている。
「これじゃあ、その内目が熱中症になっちゃうな」
なんて一人ごちてため息。少しずり落ちた眼鏡の位置を直す。
ため息。
カツン、と靴音一つ、歩を進めた。数歩で止まり再びため息。
これじゃあまるで滑稽だと自覚しながら、それでも足は地面を離れてくれなかった。
夕焼けに染まる道でただ一人、立ち尽くす。
「……」
なんてことはない。自覚はしている、自分の抱える範疇に無いことだとも、あってはならないことだとも。
けれど迷いは無くならない。あれだけ釘を刺されてなお、心には一抹の思いがあった。
「少しくらいなら、…いいか」
逸脱。まさに相応しい言葉だと思う。
眼鏡越しに見える死の形を無視して、その場で半回転する。
坂道は下り道に、移した視界の先に目標を捕らえた。
「……行こう」
一歩。立ち止まるより辛い一歩を、徐々に踏み出していった。


[ 匿名さん ]
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