前回は
>>624
そろそろ無計画に書いてきたツケが回ってきています
というか何が書きたかったんだ今回……
日は随分と傾き、嗄れたカラスの鳴き声が一日の終わりの到来を告げる。東の空は既に群青色に染まりつつあった。
店を後にしてから、一時間程度経っただろうか。
最初こそ他愛もない話を繰り返していた二人は、かれこれ三十分以上も沈黙を守り続けている。
沈黙とはいっても、特に険悪になったわけでも、変に互いを意識しあってよそよそしくなったわけでもない。
気まずさとはまた違う空気。
他の何も変わった様子はなく、ただ会話だけが抜け落ちてしまったようだった。
七夜は、それに気付いていた。
会話がなくなったことにも、その原因にも。
だが、それをあえて口にするのも憚られる気がした。
隣りを見やる。
翡翠は、相変わらずの無表情で歩き続けていた。
否、無表情というよりは、一心不乱といった印象を受ける。
他のことに一切気がつかないほど、歩くことに集中していた。
それでも、そろそろ確かめずにはいられない。
「翡翠」
七夜の声にも、翡翠は気付かない。
気付くだけの余裕がないのだ。
「翡翠」
もう一度、今度は少し強く名前を呼ぶ。
「……」
「……」
意図的に無視してるわけじゃ、ないんだよなぁ……。
多分、翡翠には聞こえていないのだ。
あんぱん食ってる時の俺みたいだな、と七夜は思った。
とはいえ、呼んでいるのに無視されるのは七夜にとっても気分がよくないものであった。
ならば、気付かせればいい。
明らかに悪意を含んだ笑みを浮かべながら、七夜は荷物を全て左手に持ち替え、翡翠との距離を少しずつ詰めていく。
そして、翡翠の横顔に自身の顔を近付ける。
鼻が触れそうな距離まで来ても、翡翠は一向に前を向いたままだ。
うん、ここまできたら気付かない方が悪い。
そう割り切って、七夜は全く無防備な翡翠の耳にふうっと息を吹き