お呼びじゃない子が、投下っ…!
「朱い…月?」
アルクェイドにすら予想外のその名は、容赦ない衝撃をもたらした。
降り注ぐ雨は徐々にその勢いを増し、あるはずの無い邂逅を静寂から拭い去る。
かつてゼルレッチと勝利を確信した末の戦いに敗れ、今や空席に陥った最たる長。
吸血鬼の中でその覇権を思うがままに、世界を敵に回してすら勝利が不可能でなかった固体。
そんなものが、何故一介の殺人鬼を狙い世界を跨ぐというのか。
「まあ、実際は朱い月の割に酷い出来損ないなのよ」
志姫はそう、アルクェイドに切り出した。
「平行世界を行き来できるお爺さん、ゼルレッチね。あの人が唯一殺し損ねた成れの果て」
あまり話すことが好きでないのか、手持ちぶさたに柄を弄りながら志姫は説明を続ける。
「で、どういうわけかお爺さんでは殺せない固体になってたの、ソイツ」
納得。アルクェイドはどこまでも奇異な説明から、ようやく論点の主題を把握した。
「だから、直死持ちの志貴が