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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.656399
#604
>>600
なるほど、空白を入れた方が臨場感を出せそうですね。参考にさせていただきます。
指摘ありがとうございました。
最近盛り上がってていい雰囲気ですね。できればこのまま1000まで突っ走りたい。
前回は>>595です。

「し、き・・?」
屋上へと続く扉を開けると、首を掴まれ吊り上げられるシオンの姿が目に飛び込んできた。
口の端から血が流れている。衣服や肌は痛々しく裂けている。
「おや、君がここに来るのは台本に無いはずだが。ヒロインを助け出すのは確かに主役の役目だが、生憎そのような脚本は私の趣味ではないのでね」
シオンを掴んでいる手を離し、こちらを向く。叩きつけられるように地に落ちたシオンは喉を押させて咳をしている。
「演技指導をしてあげよう。アドリブを過剰に加えるキャストには死が相応しい」
憤りを露にし、近づいてくる。軽やかな足取りではあるがあまりにも重く禍々しい空気を纏っている。
瞬間、ワラキアが地を滑る。走るというより滑空。人間とは比にはならない速度だった。
マントを前に突き出す。ふわりと優雅に舞うそれは、見た目にはとても攻撃とは言えない。

だが、俺の体に突き刺さるそれは。

尋常ではない破壊力を秘めていた。

重力を無視するかのように動いたマントは鋭い刀剣のようでもあり鈍重な鉄槌のようでもあった。
肉を裂き、骨を削る。体内を侵すマントは生きる気力自体を奪っていきそうだった。
胸から流れ出る血液が床へ流れる。初めて目の当たりにする量の血。だが意識はひどく冴えていた。
冴えている、というより一点に向けられている。そう、ただこいつを殺す。
このナイフをあいつの胸の中心に見える死点に突き立てる。ただ、それだけを考えていた。
俺が生まれ育った有間家。秋葉達と楽しく過ごした遠野家。様々な人と出会ったこの街。
その一切がこいつに蹂躙され消されそうになっている。俺の思い出や大事な人もすべてが。
許せなかった。今までに感じたことの無い憤りを超えた感情。それは使命感だとかそういうのではない。
もうあいつを殺すこと以外は考えられない。胸の痛みは感じられず、自分でも驚くぐらい何事もなかったかのように俺は立ち上がる。
視線はただあいつの死点だけを捉えている。ナイフを握る手には満身の力が込められている。
「ほお、あれをくらってまだ立てるか。だが、ここで死ね!」
口が裂け醜く嘲笑するワラキアが爪型の衝撃波を放つ。俺の体をいとも簡単に裂くそれすら俺の意識を揺るがすことはできない。
一体どれだけの血液が流れ出ただろうか。体は急激に熱を失って寒気がする。
一体どれだけ体を裂かれただろうか。体中で裂けている箇所は数え切れない。
一体こいつはどれだけ人を殺すのだろうか。俺がここでこいつを殺す。それでおしまいだ。
一歩ずつ静かに歩を進める。俺は死を目前にしているというのに心はとても穏やかで静かだった。


[ 匿名さん ]
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