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🪓 メルティブラッド攻略・地方


No.654720
合計:
#215
前回は>>214


まず、と彼は考える。どこへ向かえばよいのか。当て所も無く彷徨うのも悪くは無いが、あいにくと眠い。
早々に元の居場所で眠ってしまいたかった。
そのためにはやはり早々に蹴りをつける……殺すことが一番だ。短刀を持ったまま思索にふける。と。

きぃん、がっ! どしゃあ!

そんな、深い夜には相応しくない物々しい音を耳にした。
否、こんな怪夜だからこそ聞こえる戦闘音か。そう考え、彼は顔を笑みに歪める。

「はん。運が良いのか悪いのか? とりあえず行って見るとするかね」

行って見るまでもなく、その戦闘音は近づいてきていた。そして、七夜志貴は遭遇する。


それは追う者と追われる者。言うなれば捕食者と獲物。

「逃がしません!」

投擲される鋭い刃。それを時に避け、時に弾き。時に掠りながらもどうにか逃げ続けている制服の彼女。
それを的確な攻撃で追いつめていく法衣の彼女。双方共に、七夜志貴の知るところにある人物だった。

「弓塚さつきに、シエル『先輩』か……また何を遊んでいるんだろうね、一体」

遠野志貴と同じ学校に通っているはずの二人が何故か殺しあって……いや。
追いかけっこをしているのかなど勿論七夜には分からない。
まぁこんな怪夜、何があろうと驚いていては詮無いことだ。
さて、と彼は腕を組む。
必死の形相で逃げるさつきだったが、いかんせん既に手負いの体ではあと数分も持つまい。
追うシエルの表情も真剣で、とても逃がしてくれそうな雰囲気ではない。

「どっちかを捕まえて話を聞ければ手っ取り早いんだが……。
 ここで俺が割り込んで行っても素直に話してくれそうには、ないよなぁ」

最早目の前で行われている逃走劇を無関心に眺めて思考する七夜。
何をするにももう時間は残されていないだろう。

「手加減できませんからね!!」

シエルの体が、加速する。
それは加速なんて表現をぶち抜いた速度だったのだけれど、七夜志貴には感覚できていた。
弓塚の体がいとも簡単に宙を舞う。衝撃でしばらくは動けなくなるであろう状況だ。

「弓塚が殺されるのを待って、シエルに話を聞くか?」

その時、脳裏に浮かんだ小さな約束が一つ。遠野志貴の頭に今も残っている悔恨の念。
知らず、七夜志貴は舌打ちしていた。遠野に、引っ張られてやがる。
それは当然、七夜志貴は遠野志貴のIfだから。
負け惜しみの如く口にしたその言葉には諦めと。少しばかりの喜びが混じっていた。

「いや、両方から話を聞く方が得策か。この怪我なら弓塚は動けない。
 となると『先輩』を止めるのが一番良いか……全く、今も不死者であるなら一遍殺すほうが早いんだがね?」

最も、七夜志貴はとっくのとうに理解している。弓塚さつきからは何の情報も引き出せないだろうことを。

「あぁーーーーーー!!!」

必死で抵抗するさつき。なんというかまぁ、殺すには惜しいなんて思ってしまった。
結局、七夜志貴の思考、そして選択は変わらなかった。
今にもさつきの生死が決しようというその時、七夜志貴は駆け出した。

──────running for 『a promise』


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