「牛乳は理想的な食物である」ということがよく言われるが、
牛は人間の乳児のために乳をつくるのではない。
自分が生んだ子牛のために乳をつくっているのだ。
当然のこととして、牛乳は子牛の生理に合うのであり、
人間の生理には合わないのである。
だから、人間が飲むと様々な不都合が生まれるのである。
牛は短命なので、早く成年となって子孫を生まなければならない。
つまり早熟である。
だから牛乳には成長促進ホルモンを含んでいる。
そのために、牛乳を飲み続けた人は早熟になってしまう。
戦前の日本人の初潮は平均十六歳であったが、
現在は十二歳にまで下がってしまった。
早熟ということは短命だということである。
ますます牛乳に親しんでゆく日本人は、
ますます短命になってゆくのである。
「牛乳はカルシウムの宝庫」といわれているが、
牛の生理に会った牛乳は、人間の生理には合わないどころか、
大害をもたらしている。
それは、人間の骨を弱くするのである。
一般の評価とは全く逆なのである。
(中略)
骨粗しょう症は、カルシウム不足ではなくて牛乳によるカルシウム過多が原因なのである。
これを発見したのは、神戸のある獣医だが、
競走馬の骨を丈夫にするためにカルシウムを注射するようになってから、
骨折で廃馬が多くなった。
その原因は、カルシウム過多だという。
生体というものは、ある特定の成分が多くなると、
必ず何らかの障害が発生するのだ。
「ジャガ芋はカリウムの宝庫だからといって、ジヤガ芋をとりすぎたら、
カリウム過多で心臓障害を起こしてしまう」のである。
カルシウム過多で血液の組成が崩れてしまうと
様々な全身的障害を起こすのだ。
特に鉱物性カルシウムはいけない。
人体は、カルシウム過多を調整するために、
副甲状腺の上皮小体という器官に命じてカルシウムの摂取を止めるホルモンを出し、
一方、甲状腺C細胞に命じてカルシウム排他ホルモンを分泌させて、
血中カルシウムを排泄させる。
過剰なカルシウムをとり続けると、上皮小体はホルモンを出し続ける。
このために、人体はついにカルシウム摂取能力を失ってしまう。
一方、甲状腺C細胞は強力なので血中カルシウムを排泄し続ける。
そのために血中カルシウムは不足してしまう。
そこで仕方がないので骨のカルシウムを摂取することになる。
そのために骨はスポンジ状になってもろくなる。
ちょっとムリをすると骨折を起こしてしまうのである。
いくら身体にいいからといって、ある限度を超せば害がでるのである。
以上がこの現象を発見した神戸の獣医さんの説である。
牛乳中の乳糖を消化する酵素は、日本人の場合成人はこれを持っていない。
そのために、乳糖は未消化のまま吸収されてゆく。
血中に入った未消化乳糖は、アレルギー因子となって、
風邪、花粉症、アトピー性皮膚炎などを引き起こす。
牛乳をたくさん飲んでいる人が風邪をひきやすいのがこのためである。
軽い花粉症、アトピー性皮膚炎は、牛乳をやめただけで治った人を筆者は何人も知っている。
西欧人は肉食が多いので繊維質が少ないために便秘を起こす。
そこで牛乳中の緩下剤をとって便通をつける。
日本人は牛乳を飲むと下痢をする人があるのはそのためである。
日本人は食事の中で十分な繊維質をとっているので、
牛乳の力を借りる必要はないのである。
(一倉定著『食事を変えなければ大和民族は衰亡する』<致知出版社刊>から引用)