僕の名前は、オメーンコ・ティン＝ポコ。
数少ない友は、僕のことを親しみを込めて、オメコティンポと呼ぶ。
僕の自己紹介をしよう。
年齢は38歳。独身の男だ。身長168cmで体重99kg。100kgに到達することのない、小柄な男だ。仕事は工場で派遣社員をしている。髪はサラサラヘアーで少しの風にも靡く。最近、櫛が頭皮を引っ掻き痛いし、鏡で見ると赤くバーコード状の筋になっているのが見える気がするが、気のせいだろう。
まあ兎にも角にもとても充実した日々を送っている。
僕の趣味は、ラーメンを自作することと、風俗情報サイトを巡り、あたかも性体験をした錯覚をしながらするマスターベーションだ。
ちなみに、僕の作るラーメンは僕が追い求めた最高のラーメンで、常に最高の人間が最高の素材を持って作る。その行為は最早調理ではなく、そう、言うなれば錬成…もしくは創造…。まさに神の領域だろう。
故に僕は、神のラーメンと、そう名付けた。
いつも僕は、神のラーメンを作り上げると、家族やご近所に振る舞う。
勿論、スープを一から炊いているので、部屋中とても素晴らしいスメルで包まれる。きっと、同じマンションの皆にも届けられていることだろう。
いつも僕がラーメン作りに取り掛かると、両脇、上下の部屋も慌しくなるのだが、きっと僕を祝福してくれてるに違いない。
彼らもまた、神のラーメンに近づける幸福を味わっているのだろう。
先日回覧ボードに「異臭の苦情」があったが、神のラーメンの香りの邪魔をする者がいるのかと、ガッカリしたものだ。
そうこうするうちに、神のラーメンが出来上がる。
比内地鶏、羅臼昆布、アグー豚。小麦ははるよこい。隠し味には秋刀魚の煮干しを使っている。灌水と塩もモンゴル産の高級品だ。
…おや、誰か来たようだ。
