田植えが終わったばかりの春の日のことだった。辺り一面は植えつけられたばかりの稲の苗で緑に色づけされあ長閑な風景の中にある廃車置き場でＴさんはシンナーにふけっていた。その日、俺は勝山のヤスサキホームセンターに行くつもりでバス停で勝山行きのバスを待っていた。当時の大野にはまだ「みつわ」も「パルス」も建っていなくて、ホームセンターと言えばリブレの近くにあったビッグＫだけだった。しかし、ヤスサキの方が品揃えは良かった。俺がバスを待っていると真っ黒のスカイラインが止まった。ヤンキーのＴさんだ。車を止めると俺に「こっちに来い」と手招きをしている。俺はＴさんの方に駆け寄った。「オウ、オメー何してんにゃ？」Ｔさんがきいた。「バス待ってるんスけど」。「どこ行くんや？」「勝山のヤスサキです」「ふ〜ん、俺も勝山の方行くで乗せてってやるわ」
