猪木「同じサブミッションを使っても、機械的な動きのカール・ゴッチと
流れるように華麗に動くビル・ロビンソンとでは全然違った印象を与えるんだけど、
俺はロビンソンのほうに近いね」
──その分かれ目はどこに?
猪木「ゴッチさんはプロレスラーとして結果を出していない。強いということが知れ渡ったのだって、
試合ではなくて控室でバディ・ロジャースを袋叩きにしたというようなスキャンダルの面であって、
決して名誉なことではなかった。
もしかしたらゴッチさんは、あの、ただ相手を倒すだけを目的にした
機械のような動きから見てもわかるように、いまのアルティメットのような闘いの中だったら
存分に持ち味を発揮できたかもしれない。だけど、俺は本質的にああいう闘いは好きじゃない。
プロの格闘技は勝ち負けだけじゃないと思っているから…」
──では、猪木さんとロビンソンの共通点は試合に美意識を持ち込んでいたことでしょうか?
猪木「美意識と呼べるようなものなのかどうかはわからないけど、
攻守の流れやバランス、つまりナチュラルな流れのようなものがプロレスには必要じゃないかと思う。
その意味でいうと、ゴッチさんはとくに受け身がうまくなかった」