ヨカヨカ 撮影:Ruriko.I 週末のCBC賞(G3)に熊本産馬ヨカヨカが出走するが、同馬の走りに大きな注目が集まっている。熊本産の競走馬として、初めてJRAの重賞を勝利達成できるかが懸かっているのだ。
ヨカヨカは熊本にある本田土寿牧場の生産馬で2018年5月18日に誕生、翌年に行われた九州1歳市場にてJRAが340万円で落札。その後、宮崎育成牧場でJRAの育成馬として調教を受け、2020年ブリーズアップセールにて1122万円で落札されている。1000万円を超える落札額が話題となったが、公開調教で一番時計を出したことが評価に繋がった。
九州産馬ながらデビューは阪神で、後の京王杯2歳S(G2)勝ち馬モントライゼを退けてデビュー勝ち。その後オープン特別のフェニックス賞とひまわり賞を連勝。ファンタジーS(G3)と阪神JF(G1)を連続で5着と好走し、フィリーズレビュー(G2)で2着。
マイルの桜花賞(G1)は17着に大敗しているが、前走の葵ステークス(重賞)で不利がありながら2着に好走。1200m戦は4戦3勝2着1回の好成績で、今回CBC賞が行われる小倉競馬場の芝1200mは2戦2勝とベストの条件だ。
今年のCBC賞は京都競馬場の改修工事に伴う変則開催で、九州の小倉競馬場で行われる。地元九州の競馬関係者の前で重賞を勝利できれば快挙に箔が付き、九州の馬産関係者に勇気を与えるのは間違いない。
現在日本のサラブレッド生産地は北海道が大多数を占め、2020年では北海道が7392頭、青森が80頭、宮城3頭、茨城6頭、栃木16頭、千葉1頭、熊本26頭、宮崎7頭、鹿児島25頭となっている。また日本軽種馬協会が管理する九州種馬場には、現在はインティの父ケイムホームと、ヨカヨカの父であるスクワートルスクワートが繋養されている。
過去の九州産馬で主な活躍馬を見てみると、JRAの重賞を勝利した馬も何頭か見かける。テイエムチュラサン(鹿児島産)はアイビスサマーダッシュ(G3)を勝利し、他にもコウエイロマン(小倉2歳S)、コウエイトライ(小倉サマージャンプなど障害重賞4勝)、古くは日経新春杯(G2)を勝利したケンセイグッドも九州産馬だ。
しかし、熊本産馬によるJRAの重賞はまだ未勝利。それだけにヨカヨカにかかる期待は大きい。
CBC賞でヨカヨカがどんな走りを見せるか目が離せないが、今年も注目の九州産馬が何頭か見られる。そこで今回は今年から来年にかけてデビューする九州産の2歳馬に注目し、その中から6頭の注目馬を紹介したい。
■コウエイヨカオゴ(牝・鹿毛)
父カンパニー
母ハニーダンサー
厩舎:新谷功一 (栗東)
馬主:伊東政清
生産:本田土寿
姉がヨカヨカということで注目度はナンバー1。馬名の由来は鹿児島の方言で「美人」とのこと。昨年の九州1歳市場にて、最高価格の税込550万円で鹿児島馬主の重鎮である伊東政清氏が落札。今週土曜の小倉5R新馬戦(九州産馬限定)に出走する。カンパニーのラストクロップということもあり注目したい。
■コウユーキレカ(牝・青毛)
父ノヴェリスト
母ヴァルパライソ
厩舎:斉藤崇史 (栗東)
馬主:加治屋貞光
生産:ストームファーム
2020年のサマーセールにて税込627万円で九州馬主の加治屋貞光氏が落札。母ヴァルパライソは白老ファームの生産でサンデーサイレンス産駒。現役時代は2勝のみだが、産駒の勝ち上がり率はまずまず。九州産とはいえ、血統的には父もノヴェリストで、社台グループの生産馬と遜色ない良血馬。デビュー戦は5着も相手関係からすれば上々の内容で、九州産馬なら今年のナンバー1候補。
■フォーエバーソング(牝・黒鹿毛)
父アメリカンペイトリオット
母ヘヴンリーヴォイス
厩舎:加用正 (栗東)
馬主:石川秀守
生産:ストームファーム
昨年の福島2歳S(OP)を勝利したルクシオンの妹。2020年の北海道オータムセールにて、税込330万円で石川秀守氏が落札。父アメリカンペイトリオットは今年の新種牡馬で、すでにブレスレスリーがデビュー勝ちをおさめている。調教中の事故で急死した姉の分も活躍してほしいところ。今週土曜の函館5R新馬戦に出走する。
■テイエムヒッサーロ(牡・栗毛)
父テイエムオペラオー
母テイエムヨカオゴ
厩舎:杉山晴紀 (栗東)
馬主:竹園正繼
生産:テイエム牧場
2018年に亡くなったテイエムオペラオー最後の世代。馬名の由来は鹿児島の方言で「なにくそ」の意味を持つ「ひっさろ」から。全兄テイエムコンドルは4勝して約1億円を稼いだが、九州産ではなく日高の生産だった。純粋な九州産馬だった兄は未勝利だったので、同馬に悲願の勝利がかかっている。今週土曜の小倉5R新馬戦(九州産馬限定)に出走する。
■ジュンオーズ(牡・鹿毛)
父ケイムホーム
母レディプリンセス
厩舎:勢司和浩 (美浦)
馬主:河合純二
生産:本田土寿
今年行われたJRAブリーズアップセールで税込935万円で河合純二氏が落札。母レディプリンセスはケイアイファームの生産馬で、現役時代はJRA未勝利だったが、祖母が名牝シンコウラブリイという血統。今週日曜の福島6R新馬戦に出走する。
■ペールマスタード(牝・栗毛)
父ダノンゴーゴー
母サルヴァドール
厩舎:不明
馬主:ビッグレッドファーム
生産:ストームファーム
マイネル軍団総帥の岡田繁幸さんが、2020年の北海道セプテンバーセール220万円で落札。父ダノンゴーゴーは熊本で種牡馬だったが、産駒はいまだ未勝利で昨年種牡馬を引退している。岡田総帥が素質を見抜いたダノンゴーゴー産駒が活躍できるか、注目したい。
この6頭を含め60頭ほどの九州産馬がJRAと地方競馬でデビューする。その中には前評判を大きく覆すような素質馬がいるかもしれない。ヨカヨカのような活躍を見せる馬が誕生するか、今年も九州産馬の走りから目が離せない。(文=仙谷コウタ)
<著者プロフィール>
初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。