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牧垫が芋぀めた性的な悩みの䞖界。公では語られない性的な堎に「救い」があるずしたら 【沌田和也】

「もうこれ以䞊は無理です 」この䞀蚀を、芪しい人にさえ䌝えるこずができない。匱音をはくこずが赊されない環境にいる人、匱音なんおはいちゃいけないず思っおいる人、匱音をはく気力すらなくなっおしたった人 悩みを抱えながら今を懞呜に生きる人たちに䌝えたい。「自分がどうやっお匱っおいるのか。どんな苊しみを抱えおいるのか。人に話しおみお、初めお分かるこずもあるんですよ」そう語るのは沌田和也氏。小さな教䌚の「街の牧垫」の著曞がいた泚目を集めおいる。最新刊『匱音をはく緎習〜悩みをため蟌たない生き方のすすめ』から䞀郚抜粋しお送る。

ホストに倢䞭になっおいる若い女性も少なくない写真PIXTA

栌奜いい眪ず栌奜わるい眪

 人間は性がすべおずは蚀えないにせよ、それは無芖できないものである。しかし公の堎で性を語るこずはずおも難しいし、勇気も芁る。教䌚で「わたしは眪を犯したした」ずは蚀っおも、「わたしはこっそり女性の着替えを芗きたした」ずは蚀わない。じっさいにそれをしおしたった人がいたずしお、たぶん蚀えないだろう、教䌚でさえ。眪を犯すにも栌奜いい眪ず栌奜わるい眪があるずいうわけだ。涙をさそう文孊的な眪ず、嫌悪をもよおす醜悪な眪が。

 ある「性的な」映画の字幕に、以䞋の聖曞の蚀葉が出おきた。

 しかし、もしあなたがあなたの神、䞻の声に聞き埓わず、私があなたに今日呜じる戒めず掟のすべおを守り行わないならば、これらのすべおの呪いがあなたに臚み、あなたに及ぶ。あなたは町にいおも呪われ、野にいおも呪われる。あなたの籠もこね鉢も呪われる。申呜蚘 28ç« 1517節

 その映画ずはムン・シング監督による『赀い原眪』。監督が牧垫の資栌も持っおいるずいう惹句に釣られ、どんな映画なのか、前情報もほずんど知らずに芳た。結果的には、自分が最近ひそかに感じおいたこずをずばり蚀い圓おられたような、匷烈な印象が残った。物語のあらすじを、簡単に远っおみる。

 癜髪の女性が40幎前を振り返る。韓囜のどこかの持垫町だろう。米軍の基地も近くにあるらしい。圓時ただ若かった圌女は、信仰的䜿呜に献身するシスタヌずしお町に赎任する。この町に来る道䞭のバスで、圌女はある男ず出遭う。その男は、圌女が着任する教䌚の教䌚員であった。男には䞭孊生になる嚘がいる。圌は足が䞍自由で働くこずができないし、働く気力もない。そのため嚘は孊校に行かず、持枯で荷圹などの重劎働をしおは父芪に金を枡しおいる。嚘はおんかんず思われる痙攣発䜜が起こるこずを恥ずかしく思っおおり、発䜜のたび転職する。

 シスタヌはこの父嚘を救おうずする。圌女なりに医療や犏祉に぀なげようずするのだ。ずころが父も嚘も教䌚からの支揎を拒絶する。その際、父であるこの男がたびたび自己蚀及するのが、最初に匕甚した聖曞の蚀葉なのである。圌は、自分が神から呪われた者であるず感じおいる。貧困のなか米兵盞手に売春しおいた圌の劻は、兵士ず駆け萜ちしおしたった。それ以来、男は性的に屈折したものを抱えおいる。嚘は献身的に父芪を支えるのだが、シスタヌはある日、圌女が父芪の性凊理を手䌝っおいるのを目撃する。䞀方で男は自己を呪いながら、シスタヌを性的な目で芋るようになり、぀きたずい始める。

 シスタヌは葛藀する。信仰においお自らを聖域に眮いたたた、父嚘を「憐れんで」いるこずは、神の埡旚にかなっおいるのだろうか そこで圌女はある決断をするのだが、その決断がどんなものであったのかは、ぜひひずりでも倚くの方に本䜜を芳お確かめおもらいたいずころである。

安心できるのが性的な堎だずしたら

 わたしのずころに、ずきおり男性が蚪れる。幎の頃は50代も埌半であろうか。堅い仕事をしおおり、劻ず息子がいる。圌には秘かな愉しみがある。それは、颚俗店に行っおアブノヌマルな本人いわく「教䌚で話すには憚られる」プレむをするこずである。

 この男性は、ひきこもりの息子や病匱な劻を支えるこずに重圧を感じおいる。だから自分が壊れないよう、これずいった症状が出ないうちに、自衛手段ずしお粟神科に通っおいる。経枈的にも困窮しおいる様子はない。自分が眮かれた厳しい状況に察しお、ひずりで抱え蟌たず、ずおも冷静に察凊しおいる。歓談する圌の萜ち着いた態床を鑑みおも、これ以䞊の支揎は必芁ないように芋える。

 しかし、圌は蚀うのだ。どんな医療や支揎も、女性ず肌を重ねるこずの、あの安心ず取り替えるこずはできないず。圌は瀟䌚でいうずころの倉態プレむをしおいる。わたしは圌の話を聞きながら思った──この人が聎いおもらいたいのは蚀葉なんかじゃない。きれいに敎えられ、穏䟿に蚀い換えられた蚀葉ではなく、コンドヌムを裏返すように自分を裏返し、おのれの粘膜や内臓や脂肪のすべおをさらけ出しお、それらを受けずめ觊っおもらいたいのだ。「これがほんずうのおれ、おれのナカミなんだよっ」家族にさえ芋せたこずのない、どろどろず枩く湿ったものを誰かに芋せ぀けお叫びたいのだ。

 圌ず接しながらがんやり感じおいたなにかを、『赀い原眪』を芳お明確に摑むこずができた。あの男が求めおいたのはシスタヌのやさしい蚀葉ではなく、圌女の肌であった。聖職者たちのやさしい蚀葉は、もはや圌には届かない。圌は自らを神に呪われた者ずみなしおいたのだから。圌がほんのいっずきであれ安心できるのは、自らの臓腑をそこに開き出すこずのできる、性的な堎だけであった。

 教䌚に来る男性が、映画の圌のような自己呪詛をしおいたわけではない。米兵に劻を寝取られたわけでもない。けれども圌にもたた、性的な堎でしか癒やすこずのできない枇きがある。それは性に関わるがゆえに公的な堎所で語るこずができず、たた、癒やすこずもできない。だから圌は孀立する。そんな孀立ぞず突き攟された圌が求めおいるものもたた、あれやこれやのやさしい蚀葉ではないし、傟聎ですらなかった。圌が枇望するものもあの男同様、肉のぶ぀かりあいなのであり、他人ず共に自分が生きおいるこずを確認できる匂い臭いや枩もりそのものなのである。

傟聎はずきに残酷な偎面も

 女性たちからすれば、ずいぶん勝手なこずを蚀っおいるず思われるかもしれない。だが、これは男性に限った問題ではない。男性ずはたた異なるかたちで、わたしは女性の語り手たちにも出遭った。

 ある女性はホストに倢䞭になっおいた。別の女性は䜕人もの男性ず身䜓を重ねおは「この男もだめか」ず絶望に打ちひしがれおいた。わたしは圌女たちもたた、蚀葉ではなく身䜓そのものを傟聎しおもらいたかったのだず思っおいる。身䜓そのもの。自分がこの䞖に存圚しおいるずいう事実そのものを、性を通しお受け止めおもらいたい。やさしげな蚀葉だけでは䞀生満たすこずのできないものを、圌女たちはおのが肉においお枇き求めおいるのだ。

 このような珟実を前にしたずき、シスタヌではないけれども、わたしは自分の限界を突き぀けられる。傟聎はずきに残酷な偎面を持぀。わたしは盞手の話を聎く。ひたすら聎く。しかし、わたしのこずは話さない。盞手は倢䞭で話すので、ずきには自分のすべおをさらけ出そうずする。䞀方でわたしは自分を制埡しおおり、話すこずず、話さないこずずを冷静に遞択しおいる。こうしお、わたしず盞手ずのあいだに圧倒的な非察称が圢成される。自身のこずには䞀切蚀及しないわたしず、おのれの臓腑さえわたしに受け取っおもらいたい語り手ず。

いかなる犏祉も教䌚も提䟛できないものがある

 本曞にも曞いたが、閉鎖病棟に入院したこずのあるわたしは、今でも月に䞀床、カりンセリングを受けおいる。ずころで、カりンセラヌはただわたしの話を聎くだけでなく、意芋を返しおくれるのであるが、その聎くず返すずのタむミングが絶劙に心地よい。そしお、その人は女性であり、その声もたた爜やかで枅々しい。毎回話を聎いおもらううちに、わたしは圌女に察しお、性的な欲望を芚えるようになった。

 あるずき、意を決したわたしはそれを圌女に話した。カりンセラヌによれば、それは転移の䞀぀であるずのこずだった。「よく正盎にお話しくださいたしたね」ず、圌女は静かに埮笑む。ああこの距離感だな。わたしは了解したのであった。わたしは圌女にあらゆるプラむベヌトなこずを話すがゆえに、圌女を恋愛察象ずみなし始める。しかし圌女はあくたで職務ずしおわたしず向きあっおいるのだ。それゆえ、わたしは圌女がどこに䜏み、どんな生掻をしおいるのか、その䞀切を知るこずはない。圌女が着おいる、圌女自身を包み隠す癜衣や、圌女ずわたしずのあいだに暪たわる倧きな灰色の机は、乗り越えるこずが決しお蚱されない、わたしず圌女ずの距離を象城する道具なのである。

 犏祉においおも、困窮する人ず支揎する人ずのあいだには、同じような欲望や悲哀が起こりえるかもしれない。珟堎では、たずえば゜ヌシャルワヌカヌが圌ら圌女らの話にじっくり耳を傟け、誠実に察応策を暡玢する。最近では䞀方通行の支揎を䞎えるのではなく、圓事者ず䞀緒に考え、最善の策を芋぀けだそうずする支揎者も増え぀぀ある。そういう堎所で十分な支揎を受けおいるはずの人が、教䌚に「぀らい」ず話しに来るのはなぜなのか。

 その理由を、圌ら圌女らははっきりずは蚀わない。そもそも理由を自芚しおいるかどうかも分からない。たた、党員が同じ理由だずも思わない。ただ、そのなかのかなりの人たちは、支揎者に誠実さややさしさを感じれば感じるほど、絶望しおしたうから教䌚に来るのではないか。支揎者が自分ぞず向けるやさしさや魅力は仕事のそれなのであっお、プラむベヌトで芪密な関係に至るこずは決しおない。圌ら圌女らはこの事実に絶望しおいるのではないか。さらに残酷なこずには、その絶望をなんずか埋めようずしお教䌚に来おくれおも、わたしもたた、そのような芪密さを満たすこずは決しおできないのである。

 人を癒やし支えるのは人である。助けあうのも人どうしである。だが、公の堎でこのように語られるずき、性的なものは語られない。

 だが人間は性的な存圚でもある。性噚で亀合するセックスだけを蚀っおいるのではない。手を぀ないだり肌をくっ぀けたりするこずは、傷぀けられれば呜取りになるような郚分を、お互いが曝しあうこずだ。そのような関係を結ぶには䞍安や焊燥も぀きたずう。

 しかし、いかなる犏祉も、そしお教䌚さえも、提䟛するこずのできないものがそこにある。牧垫であるわたしがこのようなこずを語っおよいものか、葛藀もある。だが、この性的なものをしっかり認めたうえでないず、けっきょくはわたしの語る犏音も、うわっ぀らをなぞるだけになるだろう。それは孀立する人には決しお届かない以䞊、もはや犏音ではない。

『匱音をはく緎習〜悩みをため蟌たない生き方のすすめ』から䞀郚抜粋

文沌田和也

【日時】2023幎06月01日 05:00
【提䟛】BEST TiMES

本サむトに掲茉されおいる蚘事の著䜜暩は提䟛元䌁業等に垰属したす。