
華やかな広告の裏で、ひそかに膨らむ国家的赤字爆弾。
ジャングリア沖縄の真の問題は、もはやアトラクションの処理能力不足ではない。
核心は、その崩壊寸前の構造に、巨額の公的資金が注ぎ込まれていたという国家レベルのスキャンダルである。
◾️官民癒着か? 700億円が消えた資金トンネルの正体
総事業費700億円。その資金源の半分は、政府系金融機関を含むシンジケートローン。
主導したのは、国民の資産を預かる商工中金。単独で80億円もの融資を実行。
さらに琉球銀行など地元金融機関がズラリと名を連ねる。
もはやこれは「民間企業のチャレンジ」などではなく、国が後ろ盾となった“税金付き巨大リスク投資”だった。
プロジェクトの中核を担うのは、「USJの復活請負人」と喧伝されたマーケティング企業「刀」の子会社、ジャパンエンターテイメント。
だが実態は、赤字続きのエンタメ企業。そんな企業に数百億円規模の資金がなぜ流れたのか。国民には何一つ説明されていない。

◾️サステナブルの皮をかぶった資金詐取?「環境保全ローン」の欺瞞
この巨額融資にはさらに不可解な側面がある。
それは、366億円の融資が「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」として組成されていたという点だ。
本来SLLとは、環境・社会・ガバナンスの三要素(ESG)に配慮した、持続可能なプロジェクトに対する融資制度。
しかしジャングリアの実態はどうか?
・来場者の大半が満足できない構造的欠陥
・ネット上での悪評が急増し、リピーター絶望
・プレミアムパス頼みの重課金体験モデル
これのどこが「持続可能」なのか。
実態は「自然保護」の看板を掲げて、社会的にも経済的にも持たないプロジェクトに税金を通す――見せかけだけの“サステナビリティ・ウォッシュ”でしかない。

◾️機能しなかった審査機関ーー杜撰なデューデリジェンス
融資判断において最も問われるべきは、受託者責任の所在だ。
国民の資金を動かす以上、金融機関には厳格なデューデリジェンスが求められる。
だが本レポートが明らかにしたアトラクションの処理能力不足は、すべて公開情報。
専門家でなくとも確認できたはずの構造的な欠陥を、商工中金をはじめとする金融機関は見逃した。
いや、見逃したのではない。見て見ぬふりをしたと疑われても仕方ない。
◾️沖縄振興の名を借りた“地雷投資”
この融資の名目は「沖縄県の持続的な観光開発への貢献」。
だが、来場者の満足度が著しく低く、悪評が広がれば、観光地としてのブランドが毀損され、むしろ逆効果である。
これは「地域振興」の名を借りた、観光破壊ビジネスへの公的加担だ。
沖縄県の観光戦略では「高付加価値・高満足度」が掲げられている。
ジャングリアはその正反対。低満足・高負荷・高離脱率。
この矛盾に資金が流れたという事実は、地方経済政策に対する国家の信頼を大きく揺るがす。

◾️ブランド幻想が招いた国家的判断ミス
なぜ366億円もの資金が動いたのか?
その裏にあるのは、「刀」「USJ復活」「やんばる自然」といった、ブランドの魔力に目をくらませた意思決定だったのではないか。
現実の検証を怠り、夢とスローガンに踊らされた金融当局。
本来ゲートキーパーであるべき存在が、率先して扉を開け、税金をばら撒いた。
それが今回のジャングリア資金スキームの核心である。
ジャングリアーーそれは“体験できないテーマパーク”という現代の象徴であると同時に、
“公的資金が無批判に流れる仕組み”そのものの危険性を告発する、国家的失敗事例である。
文;林直人