
アメリカの連邦地裁判事が、トランプ政権に対し、強制送還の仮差し止め命令に違反したとして、法廷侮辱罪にあたるとの判断を下した。
判事の差し止め命令を無視
ワシントンD.C.の連邦地裁の判事、ジェームズ・ボアズバーグ氏は4月16日、トランプ政権が「敵性外国人法」に基づき、数多くの移民らをエルサルバドルに強制送還したことに関する意見書を提出した。
トランプ政権は3月、ベネズエラのギャングとみられる容疑者らを、国外追放させたが、これを察知したボアズバーグ判事は、強制送還の仮差し止め命令を出し、飛行機を引き返させるよう命じた。
しかしトランプ政権は、飛行機の引き戻しを行わず、強制送還を強行。その後、当時すでに飛行機がアメリカの領空外へ出ており、またボアズバーグ判事が口頭で指示しただけで、後に提出した書面の命令にも、執行に必要な説明が欠けていたとし、裁判所の命令に違反したわけではないと主張した。
この問題について、ボアズバーグ判事は16日、トランプ政権が「敵性外国人法」の行使を禁じた仮差し止め命令に違反したとして、法廷(刑事)侮辱罪に問う相当な理由があるとの判断を下した。
帰国させるか、刑事訴追されるか
ボアズバーグ判事は、トランプ大統領が1798年に作られた「敵性外国人法」を通常の適正な手続きを経ずに行使し、行政権を拡大解釈して、ベネズエラ人のギャング構成員とされる人物らを国外追放したと指摘。
また46ページに及ぶ意見書の中でボアズバーグ判事は、当時、トランプ政権が仮差し止め命令を意図的に無視しており、「司法の命令に故意に従わない」ことは、「憲法そのものを、まさに嘲ける行為だ」と指摘した。
その上でボアズバーグ判事は、トランプ政権には2つの選択肢、つまり「強制送還された人々をアメリカに帰国させる」か、または「法廷侮辱罪で刑事告訴される」かの選択肢があると述べた。
判事はまた、トランプ政権が侮辱罪の訴訟を妨害しようとしたり、司法省の高官らに侮辱罪の訴追を拒否するよう指示したりした場合、自ら独立検察官を任命すると警告。このような判断を下した経緯についても、次のように述べた。
「裁判所は軽率に、あるいは性急に、そのような結論に達したわけではない。実際、被告ら(トランプ政権)には、自らの行動を説明する十分な機会を与えてきた。彼らの回答はどれも納得のいくものではなかった」
トランプ大統領は、これまでも度々「法には従う」と発言してきたが、実際にはさまざまな裁判所の判断に抗い続けている。
連邦最高裁判所は先日、誤って強制送還された男性の帰国を「促進」させるよう命じたが、トランプ政権はそれを実行する様子を見せていない。(了)