マカオの新交通システム「マカオLRT(Light Rapid Transit)」を運営する澳門輕軌股份有限公司(マカオLRT社)は6月1日、今年(2025年)6月の乗客数統計を公表。
今年6月のマカオLRTネットワーク(3路線)の1日あたり平均乗客数(延べ、以下同)は約1万9800人で、前月から約4900人減(19.8%減)。
マカオLRTの最近の特記事項として、2つの新路線が相次いで開業(2024年11月1日に石排灣線、12月2日に横琴線)が挙げられる。新線開業前の1日あたり平均乗客数は1万人台で、2024年12月以降は2万人台を維持してきたが、直近2ヶ月連続下落となり、6ヶ月ぶりに2万人を割り込んだ。
マカオLRTは マカオ初となる本格的な軌道系大量輸送機関として、2019年12月にタイパ線の一部区間が開業。2023年12月8日にタイパ島北西部の海洋駅とマカオ半島南西部の媽閣駅の跨海区間が開業し、マカオ半島部への乗り入れ実現とともに、全線開業を果たした。
現在、マカオLRTはタイパ線、石排灣線、横琴線の3路線体制となっている。タイパ線(13駅、約12.5キロ)はタイパフェリーターミナル駅と媽閣駅の間を結び、沿線には海と空の玄関口(タイパフェリーターミナルとマカオ国際空港)のほか、大型カジノIR(統合型リゾート)が密集するコタイ地区、著名観光地のタイパヴィレッジ、高層マンションが建ち並ぶ新興住宅街が存在。石排灣線(2駅、約1.6キロ)はタイパ線の協和醫院駅と近年開発が進んだ人口密集地のひとつ、コロアン島北部の石排灣駅を結ぶ。横琴線(2駅、約2.2キロ)はタイパ線の蓮花駅と「横琴広東マカオ深化協力区」との陸路の玄関口となる横琴口岸(イミグレーション)の直下に位置する横琴駅を結ぶ。
マカオLRT横琴線の蓮花駅に停車中の列車(資料)=2024年12月本紙撮影 マカオLRTについては、さらなる路線ネットワークの拡充が計画されている。タイパ線のタイパフェリーターミナル駅からマカオ半島東部沖に造成中の埋立地を経由してマカオ半島北端にある關閘イミグレーション前を結ぶ全線地下、全長約7.7キロの新線「東線」が2023年8月に着工済みで、2028年完成予定。同線は關閘エリアから先の青茂イミグレーションまでの延伸計画も発表済み。今年(2025年)に入って以降、マカオ政府が新たな新路線計画を相次いで明らかにしている。
4月30日にマカオ立法会で行われた2025年施政方針(運輸・工務領域)政策討論において、譚偉文マカオ政府運輸工務長官がマカオ半島西部を南北に結ぶ(現在建設工事が進む東線の青茂駅から南へ延伸し、筷子基や内港エリアを経て、マカオ半島南東に位置する既存のタイパ線の媽閣駅へ至る)「西線」、港珠澳大橋マカオ側イミグレーションからマカオ半島北東沖の新興埋立地”東区”を経由して外港フェリーターミナル、南灣・西灣エリアを経てタイパ線の媽閣駅へ至る路線の2路線について検討を進めていることを挙げた。6月21日には、マカオ特別行政区の岑浩輝行政長官が戴建業経済財政長官、譚偉文運輸工務長官らとともに、マカオ半島北西部の沙梨頭、青洲、筷子基エリア一帯を視察に訪れ、市民運動公園の建設予定地となる旧ドッグレース場で会見を行った際、マカオLRTの新路線計画について言及した。岑氏は、市民運動公園周辺の交通アクセスについてコメントした際、東線の青茂駅までの延伸条件は整っているとした上、目下、青茂駅から先のルートとして、(上述の西線にあたる)筷子基方面と(支線として)市民運動公園方面への2つの延伸計画について検討を進めてことを明らかにした。
マカオLRTは全路線(タイパ線、石排灣線、横琴線と建設中の東線)で日本の三菱重工業の全自動無人運転車両(AGT:Automated Guideway Transit)システム一式を採用。営業運転中の3路線を走る車両はすべて日本製で、東京のゆりかもめなどと同タイプのものとなっている。
マカオLRTの路線ネットワーク(図版:澳門輕軌股份有限公司)