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大道芸に剣を飲み込むというパフォーマンスがあるが、フランスでは52歳の男性の胃に、ネジやクギ、コインなど100個以上の金属が入っているのが見つかった。
患者は5年間で5回搬送され、そのたびに大がかりな手術で金属を取り除いていたが、最後には胃の切除に踏み切った。
英国医師会が発行する医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)』に先月公開された症例報告によると、患者は「離人・現実感喪失症候群」という精神疾患を患っている52歳のフランス人男性。
解離性障害があると、自分が自分であるという感覚が失われ、目の前の出来事や風景が映画を見ているように感じたり、カプセルの中に入って現実世界との間に薄い膜が張られているように感じたり、特定の時期の記憶が無くなるなど、さまざまな支障をきたす。
男性は精神科から処方された安定剤を服用していたにもかかわらず、金属製品を口にする傾向があり、2012年5月に内視鏡手術を受けてからも、4回病院に運ばれ、そのたびに飲み込んだナイフやクギ、スプーン、鉄線などを大量に取り除いた。
飲み込んだ金属は手術を重ねるごとに多くなり、2016年12月にパリ近郊のポアシー中央病院に救急搬送されたときには、血を吐いて高熱と腹痛にうなされていた。
X線と腹部CT検査の結果、胃の中に100個以上の異物が入っていることを確認。
しかも、飲み込んだカミソリの刃で胃壁に穴が開いて、腹水が溜まっていることも明らかになった。
それまでは胃カメラを見ながら、医師がチューブでつないだ手術器具を操作する内視鏡手術を行なっていたが、5回目は開腹手術に踏み切って、異物を取り除いた後は、再発防止のために胃と腸の一部を切除することにした。
患者を担当したエリアス・シャヒーン医師は「胃の切除は患者を本当に治したことにはなりません。金属を飲み込むのは、自傷行為の一環です」と話している。
『BMJ』によると、異物を飲み込んでしまう症例はそれほど多くはないが、精神病患者や心理的な問題を抱えている若者世代では報告されることがあるという。
そのうち有名なものは、自分の髪の毛を食べてしまう「ラプンツェル症候群」だという。
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