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小笠原諸島西方沖で2015年5月に発生したマグニチュード(M)7.9の巨大地震について、東北大学の研究グループは、地球中心部のマントルへ沈み込んだ海洋プレート内で発生した「日本の観測史上、最も深い場所で起きた地震」だったと発表した。
深発地震の発生メカニズム解明の手がかりになると期待されている。
2015年5月30日午後8時23分に小笠原諸島西方沖で発生したM7.9の地震では、小笠原諸島の母島と神奈川県二宮市で震度5強の揺れを観測したほか、47都道府県すべてで震度1以上を観測。
気象庁は、このときの震源の深さを暫定値で682キロと発表し、日本の観測史上、最も深い場所で発生した地震となった。
太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込む伊豆・小笠原海溝は、過去にもM7〜8クラスの地震が頻発しているが、2015年5月の地震は、周辺で起きる地震活動と比べても、震源が100キロ以上離れた孤立した海域で起きている。
世界的に見ても、1900年以降に起きたM7.8以上の地震のなかで、震源が最も深いという点で研究者が関心を寄せていた。
東北大の地震・噴火予知研究観測センター、趙大鵬教授らのグループは、地震波が伝わった時間のデータを解析することで、震源域の地下構造の三次元化に成功。
その結果、伊豆・小笠原海溝で沈み込んでいる太平洋プレートは南北に分岐していることを発見。
北側はマントルの上層と下層の間に横たわっているのに対し、南側はマントルをほぼ垂直に突き抜けて、地球内部のコア(核)に近い、下部マントルに到達していることを突き止めた。
2015年の地震は、マントルを突き抜けた太平洋プレート内の深さ667キロ前後で起きたもので、プレートが南北に断裂したことで生じたひずみなどが蓄積して引き起こされたものだと考えられるという。
二つのプレートが衝突する沈み込み帯の地下深くで起こる深発地震の中でも、地下670キロの深さを超えるものはほとんど例がなく、これまでの研究では、南太平洋のトンガ海溝やバヌアツ周辺で報告されている。
研究グループは、「断層の破壊が引き起こす通常の地震と比べて、謎が多い深発地震の発生メカニズムの解明につながる」と述べて、今回の研究成果を英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に発表した。
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