
2025年7月、サイアム商業銀行(SCB)の金融市場部門「SCBフィナンシャル・マーケッツ(SCB FM)」は、米ドル指数の下落を主因として、タイバーツは今後も強含みの展開になるとの見通しを示しました。2025年7月3日にタイ政府メディアNNTが伝えています。
SCBのパトリック・プーリエ副頭取(金融市場統括責任者)によると、最近のバーツ相場の変動は、タイ国内の政治情勢によるもので、特に首相が職務停止となった憲法裁判所の判断以降、輸出業者による売りが加速しバーツは一時的に下落したと述べています。
今後1カ月については、国内政治の不確実性に加え、米国による対タイ関税の可能性が下押しリスクとなると指摘。特に、タイが中国製品の経由問題を未解決のまま放置している点を理由に、米国が20%超の高関税を課す可能性が高いと警戒感を示しました。
さらに、トランプ米大統領が日本製品に25%の関税を課すと発言したこともあり、同様の措置がタイにも及ぶ可能性を示唆。しかしプーリエ氏は、関税の正式発表前には、米ドル安の流れに乗ってバーツが一時的に反発する可能性もあるとし、週末発表予定の米国雇用統計が予想を下回れば、輸入業者にとって米ドル購入の好機となるとも述べました。
中長期的には、米ドルの弱含み基調を背景に、資金が欧州・アジアへ流入するとの予測から、バーツ高傾向は続く見通しです。SCB FMは、年末時点でのバーツ相場を1米ドル=31.50~32.50バーツと予測しています。
また、SCBの上級市場ストラテジストであるワチラワット・バンチュエン氏は、国内政治の影響でタイ経済の見通しが悪化しているとして、中央銀行の金融政策委員会(กนง)が年内にさらに2回の利下げを実施する可能性を指摘。第3四半期に1.50%への引き下げ、その後1.25%まで下がるとの市場予想を紹介しました。
国債市場に関しては、2年債の利回りは政策金利の動きに連動して下落する見通し。一方で長期債については、世界的な金利高止まりの影響で利回り低下は限定的となる見込みです。さらに、イスラエルとイランの衝突が沈静化したことで原油価格も下落傾向にあり、インフレ圧力の後退が金利・国債利回りの上昇圧力を和らげていると分析しています。