タイ西部のケーンクラチャン国立公園で、非常に珍しい淡水カニ「プージャオファー(ปูเจ้าฟ้า)」(学名:Phricotelphusa sirindhorn)が撮影されました。2025年7月5日に写真が公開され、注目を集めています。
撮影に成功したのは、ケーンクラチャン国立公園の職員ブッサコン・カントゥック氏。場所はペッチャブリー県にある公園内のパノントゥン地区で、標高約100メートルの渓流沿いにある岩の下で確認されました。
「プージャオファー」は「パンダクラブ」とも呼ばれ、白い甲羅とハサミ、そして紫黒色の歩脚という特徴的な姿を持ちます。野生での目撃例は極めて少なく、その希少性が知られています。
このカニの学名と通称は、タイ王室のシリントーン王女の環境保護への貢献を称えて命名されました。初めて発見されたのは、ラノーン県のナムトック・ガオ国立公園で、その後もプラチュアップキリカン県のフワイヤン滝や、今回のケーンクラチャン国立公園内のカオ・パノントゥン滝など、西部の一部地域に生息していることが確認されています。
ケーンクラチャン国立公園は、ユネスコの世界自然遺産にも登録されており、豊かな生態系を有することで知られます。今回の発見は、公園内の生物多様性の証左であるとともに、保護管理の成果でもあるとされています。
「プージャオファー」は、タイの「野生動物保護法(2019年)」に基づく保護種に指定されており、今後も継続的な生息環境の保全が求められています。園長は「極めて貴重な記録であり、保護活動の積み重ねが生んだ幸運な出会いだった」とコメントしています。