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水上太陽光発電、普及の兆し…適地は海など無限大、森林伐採も不要、課題は発電コストの低減
水上太陽光発電、普及の兆し…適地は海など無限大、森林伐採も不要、課題は発電コストの低減の画像1
泉佐野市長滝第1/第2水上太陽光発電所(提供:三井住友建設)

●この記事のポイント
・再生可能エネルギーの一つとして水上太陽光発電の導入が進みつつある
・陸上と異なり森林伐採などの造成が必要ないため環境負荷も低い
・陸上での太陽光発電に比べると若干コストがかかってしまうというハードル

 国内で陸上の太陽光発電設備の適地が少なくなるなか、再生可能エネルギーの一つとして水上太陽光発電の導入が進みつつある。現時点で導入実績は陸上と比べるとまだ少ないものの、農業用ため池、遊水池、工業用水池、貯水池、将来的には、湖、河川、海洋など適用範囲は広く、陸上と異なり森林伐採などの造成が必要ないため環境負荷も低いとされる。一方、設置・維持コストの高さなどがネックとされるが、水上太陽光発電の特徴や優位性、そして普及の可能性などについて、事業者への取材を交えて追ってみたい。

●目次

水上太陽光発電の強み 需要家は毎月の電気代のみを負担 自治体・行政の動きも普及のカギ

水上太陽光発電の強み

 水上太陽光発電が陸上での太陽光発電と異なる点は何か。事業を手掛ける三井住友建設 再生可能エネルギー推進部は次のように説明する。

「一番大きな違いは、やはり環境負荷が低い工法だという点です。陸上の場合、山を削ったり森林を伐採したり造成する必要がある一方、水上太陽光発電の場合はそうした行為をすることなく設置できます。また、水の上に浮かべると冷却効果で太陽光パネルが熱くなりすぎないので、発電効率が良いのも強みです。国内では太陽光発電を行える適地が限られつつあるなか、水上はまだまだポテンシャルが大きいというのも利点です」

 このほか、同社によれば水上太陽光発電の強みとしては以下があげられる。

・水面の有効利用
 これまで使用されていなかった池や貯水池に、新たな太陽光発電設備を設置して水面を有効活用できる(新たな賃借料や利用料収入)。

・適用範囲
 農業用ため池、調整池、遊水池、工業用水池、貯水池、湖、海洋、河川など、さまざまな水源に導入可能。

・影の影響
 地上設置に比べて周辺植物の成長による日照への影響が少ないため、ロスのない発電が望める。

・優れた施工性
 人力で組立可能で、陸上への設置と比較して、施工性に優れている。工事に際して、粉じん等、騒音・振動の影響が小さい。

・遮光の効果
 フロートで水面を覆うことで、遮熱による水温上昇の抑制や、遮光による水の蒸発や藻の発生を抑制することが期待できる。

・レジリエンス
 監視カメラ、風向風速計を標準設置し、水位計や水温計を追加設置することで、災害時等のため池遠隔監視が可能となる。

需要家は毎月の電気代のみを負担

 三井住友建設は2014年に自社独自の水上太陽光発電用フロートシステムを開発し、事業をスタート。これまで自社の発電所として、合計14.4メガWの実績を持っており、水上太陽光発電の肝になるフロートシステムの開発から販売までの経験・実績を持っているのが同社の強みだ。

「現在はフロート販売事業は行っておらず、軸足を切り替えて、自社製フロートに拘らず、他社製フロートも積極的に採用し、発電事業に重きを置いて取り組んでおります。弊社は建設会社ですので、風洞実験や強度試験が可能な施設や設計部門を持っており、総合的なエンジニアリング力を活かして取り組むことができるというのが大きな強みだと考えております」(三井住友建設 再生可能エネルギー推進部)

 ビジネスモデルはどうなっているのか。契約の形態としては、需要家の近接水面を活用して自営線で直接給電する「オンサイト型PPA」と、系統線により送電する「オフサイト型PPA」の2種類がある。前者は、需要家と三井住友建設がPPA契約を締結し、同社が電力を供給する。後者は、需要家は小売電力事業者と電力供給契約を結び、三井住友建設は小売電力事業者とPPA契約を結ぶ。需要家は毎月、電気料金を支払う。

「これまでは固定価格買取制度(FIT)に基づき発電した電力を電力会社に販売するというビジネスでしたが、FIT制度の終了に伴い、現在はPPAのスキームを活用した売電事業に注力しております。水上で発電する場所と売電先をセットで探すということが開発のポイントです。

 PPAの場合、需要家様は発電用フロートシステム導入時の初期費用、メンテナンス費用、撤去費用の負担なしでご利用いただけ、毎月の電気代のみをお支払いいただくかたちとなっております。発電した電気をkwh単位の金額で契約させていただくかたちです」

 気になるのは電気料金だ。初期費用やメンテナンス費用が発生しないとなると、その分、電気料金が上がり大手電力会社の料金より高くなってしまうのではないか。

「現時点では、補助金に頼らざるを得ないのが現状ですが、国からの補助金も活用し、大手電力会社と同等くらいの価格でご提案させていただいております。やはり再生エネ由来の電源という点に価値を見いだしていただけるお客様に契約をしていただいております」(同)

自治体・行政の動きも普及のカギ

 では今後の普及に向けては、どのような点がカギとなってくるのか。

「国や行政、民間企業にもっと『水上太陽光発電』のメリットを認知してもらう必要があると思っています。そのため、今年度から水上太陽光発電に関わる数社でワーキンググループをつくり、水上太陽光発電のPR、補助金等の支援の働きかけ等の取り組みも開始しています。

 また、コストを考えると農業用のため池や水深が深くない貯水池などが向いているといえますが、弊社は洋上等での適地拡大を狙って取り組んでいるところです。海というのは無限にポテンシャルがあり、使い方によっては適地拡大となって太陽光発電の導入を一気に拡大させる可能性も持っています」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)

【日時】2025年07月17日 05:55
【提供】Business Journal

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