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ラオス国営航空、中国COMACによる買収検討の波紋・熊本路線頓挫から見る対中依存深化のリスク
ラオス国営航空 本社 2019年4月3日撮影
ラオス国営航空チャーター便 エアバスA320(2014年8月9日・羽田空港で撮影)
資料写真 ラオス国営航空チャーター便 エアバスA320 (2014年8月9日・羽田空港で撮影)

 2025年7月、経営難に喘ぐ、ラオス国営航空(Lao Airlines)が、中国の国有旅客機メーカーである中国商用飛機(COMAC)からの買収提案を受け入れる方向で検討を開始したことが明らかになった。外資による国営企業の買収、そして航空機メーカーによる航空会社買収という二重の意味で異例となるこの動きは、ラオスの政治経済における対中依存度をさらに深める可能性があり、国内外で大きな注目を集めている。

 ラオス国営航空は長年にわたり経営不振が続いており、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、その状況に決定的な打撃を与えた。国際線の運航停止や国内線の需要低迷により、財務状況は深刻さを増し、今回のCOMACからの買収提案は、まさに「渡りに船」とも言える状況だったと見られる。ラオス航空側は、COMACの傘下に入ることで豊富な資金力と、将来的にはCOMAC製航空機の導入による機材更新、そして何よりも海外路線の増強を通じた経営再建を目指したいとの思惑がある。特に、中国からの観光客誘致はラオスの経済成長にとって不可欠であり、COMACのネットワークを活用することで、その実現を加速させたいという狙いも透けて見える。

 今回の買収提案が「異例」とされる所以は、その構造にある。通常、航空会社への出資は投資ファンドや他国の航空会社が行うのが一般的であり、航空機メーカーが直接航空会社を買収するケースは極めて稀だ。COMACの狙いとしては、自社製航空機(C919など)の国際市場でのプレゼンス確立と運用実績の積み上げ、そして将来的な顧客獲得の足がかりとしたい意図が強くうかがえる。

 しかし、この買収が実現した場合、ラオスの政治経済的な対中依存度が一段と強まることは避けられないだろう。すでにラオスは中国から巨額のインフラ投資を受けており、特に「一帯一路」構想の中核である中国ラオス鉄道は、ラオスの経済発展に寄与する一方で、中国への債務負担を増大させているという指摘もある。ラオス航空がCOMACの傘下に入れば、交通インフラから航空インフラに至るまで、中国の支配力が強まることになり、ラオスの主権や外交政策に与える影響は無視できない。

 ラオス航空の経営難を象徴する出来事の一つとして、日本との直行便計画、特に熊本路線の頓挫が挙げられる。2019年、ラオス航空は熊本空港への定期便就航を目指し、現地でのプロモーション活動を行うなど、積極的な動きを見せていた。これは、ラオスからの観光客誘致に加え、日本への技能実習生の派遣といった側面からも、両国間の交流を深める重要な機会となるはずだった。

 しかし、度重なる延期と最終的な就航断念は、ラオス航空の資金力と運航体制の脆弱さを露呈する結果となった。就航に向けた準備不足、そしてその後の新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる影響が重なり、最終的には路線の維持が困難と判断されたのである。この熊本路線の頓挫は、ラオス航空が単独での国際線展開に限界を抱えている現実を浮き彫りにし、今回のCOMACによる買収検討の背景にある「外からの支援なしには立ち行かない」という切羽詰まった状況を物語っている。

 一方で、ラオス航空は過去に日本とのチャーター便運航実績もある。特に注目すべきは、2014年8月9日に羽田空港からラオス(ルアンパバーンおよびビエンチャン)への直行チャーター便を運航したことである。このフライトは、羽田空港から一般客を対象とした初めてのラオス直行便となり、同年8月14日に羽田へ帰国する行程で運航された。これは、日本市場への強い関心を示す動きだったが、定期便へと繋がるには至らなかった。

 ラオス政府は、今回のCOMACによる買収提案を巡り、慎重な検討を進めていると見られる。経営再建という喫緊の課題と、国家の独立性および国際社会からの評価という長期的な視点のバランスを取る必要があるからだ。COMACからの買収が、ラオス航空の経営を立て直し、国際的な競争力を向上させる起爆剤となるのか。それとも、ラオスの対中依存度を深め、経済的・政治的な主導権をさらに手放す結果となるのか。今回の買収は、ラオスの将来を左右する重要な岐路となるだろう。周辺国や国際社会も、その動向を注視している。

【日時】2025年07月04日 06:00
【提供】Global News Asia

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