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これまで産業廃棄物として処分されていた大量のシリコン屑を、リチウムイオン電池の材料にする技術を東北大学と大阪大学の研究グループが開発した。
従来のリチウムイオン電池に使われている黒鉛の代わりにすれば、3倍以上の容量を繰り返し使える高性能な電池を生産することができるという。
スマートフォンやノートパソコンなどのモバイル電子機器で使われるリチウムイオン電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車など新型自動車にも搭載されるようになり、近年需要が飛躍的に伸びている。
その仕組みは、正極(+)と負極(−)の間をリチウムイオンが行き来することで、繰り返し充電や放電を行うのだが、この正極と負極に使われる材料が、電力を貯める量に影響する。
東北大・多元物質科学研究所の京谷隆教授と、大阪大・産業科学研究所の小林光教授らの共同グループは、半導体や太陽電池のシリコンウェハー製造時に発生する大量のシリコン屑に着目。
従来は捨てるしかなかった産業廃棄物であるシリコンの切り屑を、ごく細いフレーク状に粉砕することで、従来のリチウムイオン電池の負極材料に使われていた黒鉛の約3.3倍のエネルギーを溜め込むことができるという。
また、シリコンは充電時に元の4倍近く体積が膨張するため、電池の内部構造を破壊し、充放電を繰り返すと急速に劣化してしまう問題があったが、劣化を防ぐ方法を開発。
試作品で実験した結果、充放電を800回以上繰り返しても容量を維持できることが実証された。
グループによると、現在世界では約9万トンに及ぶシリコン屑が発生しており、これは、リチウムイオン電池の負極材料をまかなうのに十分な量だという。
産業廃棄物がリサイクルできるうえ、高性能なリチウムイオン電池によって、リチウムイオン電池への需要の拡大に対応できる技術だとして、注目が集まっている。
なおこの研究成果は、英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』電子版に20日付で公開された。
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