爆サイ.com 関西版

🏃🏾 スポーツニュース



NO.7164521
卓球・松平賢二「将来は公務員」 安定志向から実力主義への転換

写真:伊藤圭

日本リーガーとTリーガーの二足のわらじを履く松平賢二。

同級生の水谷隼という強烈なライバルと切磋琢磨しながら、その才能は徐々に卓球界に知れ渡る。

いかにして松平は地元の石川県を飛び出し、名門・青森山田に入学するのか。

本人の言葉で軌跡を追う連載、第2回。

■「将来は公務員」安定志向の中学時代
地元の中学に進んだ松平は「卓球部には入ったものの、他のアスリートみたいなガチでやっていたわけではなかった」と明かす。

「小学生時代も卓球より、公文と習字に行ってて(笑)。そこから卓球の練習があるから、大体5時半ぐらいから、遅くて夜9時までとか。中学校でも卓球部の練習が終わるのが夕方6時すぎぐらい。で、帰ってきて7時から9時って感じで練習ですね」。

中学時代は卓球で飯を食うことなど考えたこともなかった。

それよりも松平の考え方は安定志向、ずばり公務員になることだった。

「母からは『田舎なんだから安定が一番』って口酸っぱく言われてて、だから中2の途中まで公務員になるべく勉強頑張ってました」と意外な過去を明かす。

だが、そんな松平の運命が変わったのが中2の時。

きっかけは一本の電話だった。

「お父さんから『おまえ、吉田先生から電話かかってきたよ』って言われて。『え?』って感じでした。「吉田先生」とは名門・青森山田の吉田安夫監督だ。全国1位など派手なタイトルが少なかった松平は半信半疑だった。だが、吉田氏のアプローチは熱烈だった。実家の石川県まで足を運び、有名料亭で政治家さながらに口説いたのだ。「加賀屋っていう有名な旅館の料亭で、『お前の1試合、あの1球を見て、俺はもう決めた!』とか言うんですよ。当時の自分は『まさか…』って。もちろん嬉しかったけど、緊張の方が勝ってて、生まれて初めてフカヒレを食べたことしか覚えていません(笑)」。

吉田氏の熱意はそれだけにとどまらない。

中学2年の青森山田に入学する前の松平を「ドイツに行かせよう」と言い始めたのだ。

「中2のめちゃくちゃ弱いやつがそんなとこ行ってどうすんだろ…」といぶかるも、ドイツブンデスリーガの1部を目の当たりにして火がついた。「当時は1歳上の大矢(英俊)さんと(高木和)卓さんと行ったのですが、馬文革に李哲承にトーベン・ボージックがバチバチでやりあってて、そりゃ盛り上がっちゃいますよね…」。

その勢いで公務員という将来の進路を一度曲げて、弟・健太とともに転校を決意。

「中3の後半に伸びる。少しでも早く入った方がいい」と吉田氏に後押しされ、中3の9月に青森山田に入学、日本最高峰の卓球の名門の門を叩くことになる。

■卓球エリートの巣窟へ。徹底した実力主義
入学早々、卓球部の強さの秘訣を知ることになる。

「一般の部活動だと、学年ごとで練習して一番下は球拾い、とかじゃないですか。でも青森山田はぜんぜん違った」。

待っていたのは徹底的な実力の世界だ。

すべての青森山田卓球部のOBが口をそろえる。

「あそこは完全な実力主義だ」と。

しかも同期には水谷隼もいる。

負けるわけにはいかない。

「まずは部に自分を認めてもらわないと」。

そう息巻いていた。

だが、目標は早々に縮小することになる。

「認めてもらうどころじゃない。そもそもどうやったら自分と練習してもらえるか、からですよ」という。

松平が今でも強烈に印象に残っている出来事がある。

毎年、年末に行われる「青森山田名物・全員総当たりのリーグ戦」だ。

中学、高校、大学の卓球部員が総当たりで激突するのだ。

「しかも時期が時期で、1月の全日本選手権直前。全員青森に戻ってきて、調整してる。だから誰が相手でも手を抜くことは絶対にないんです。中学生相手に大学生が本気になって打ち込んでくる。もうボッコボコにされて。『なんだ、この手応えのないやつ』みたいな顔をされる。悔しいどころじゃない。転校して3ヶ月、『これは大変なところにきた…』と覚えています」。

松平たちの先輩に目を向ければ、坂本竜介(現T.T彩たま監督)や張一博(現琉球アスティーダコーチ兼選手)ら猛者が居並ぶ。

そんな猛者の中にあって、ボロボロになりながらも食らいつき、時には勝ちを挙げていたのが水谷だった。

自分が勝てなかった水谷さえも苦しんでいる。

自分はどうすればいいのか。

焦りばかりが募る。

強くなるために出した答えが「まずは誰か強い人と練習してもらわないと」だった。

徹底した実力主義の青森山田では、弱いままでいると強い人との差が開く一方なのだ。(第3回へ)
【日時】2018年12月31日
【提供】Rallys
【関連掲示板】

本サイトに掲載されている記事の著作権は提供元企業等に帰属します。