HIV陽性で薬物依存症の女性ストリッパー「ミミ」を演じるテア・アストリーさんは、物語が終わった後のミミの人生について「生きて更生したと信じている。彼女を決して見捨てないコミュニティがあるから」と微笑んだ。一方で、「比社会が薬物依存症を犯罪ではなく病気と捉えることができれば、これまでにいくつの命が救えたのか。当局による殺害や投獄の恐怖がある中で医療機関や友人、家族に助けを求めることもできない」とドゥテルテ前政権から活発化し現マルコス政権下でも続く麻薬戦争の超法規的殺人に一石を投じた。「薬物依存からの更生に必要なことは、ただひとつ、生きていること」と涙をにじませて訴えた。
HIV陽性で同性愛者の「エンジェル」を演じるエイドリアン・リンダヤグさんは、自身もHIV陽性で同性愛者であることを公表している。かつて死の宣告とされたHIVも、今は治療ができる。「ミュージカルというプラットフォームを持てることはある意味で特権。特にHIVはまだまだ偏見がある中で、病気を脇に押しやって恐れるのではなく、適切な治療を受けながら普通の生活を送れること、誰でも予防方法にアクセスできること、そして生きてさえいれば夢を実現できることを前面に出して広めていきたい」と話した。
ほかのキャストも、役作りのため実際にHIV検査を受け「待合室の独特の雰囲気や結果が出るまでの緊張は必要な体験だった」と共有した。
9ワークス・シアトリカルはRENTの上演にあたり、HIV啓蒙活動などを行う団体とパートナーを組み、キャストはHIVや薬物依存症についてのセミナーを受講。また、SNSではチケットやキャストの情報に加え、HIVの検査や症状、誰でもアクセスできる保健機関や無料サービスについての情報も掲載している。
本公演は4月19日~6月初旬まで。チケットは9 Works TheatricalのSNSまたはチケットサイトTicket2Meから。(深田莉映) (上)RENTの代表曲“Seasons of Love”を披露するキャスト陣。(下左)HIV陽性判定を受けた自身の経験を語るエンジェル役のエイドリアン・リンダヤグさん。(下右)メディア座談会で思いを語るミミ役のテア・アストリーさん=10日、マカティ市のミラー・シアター・スタジオで深田莉映撮影