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中国政府は15日に「デジタルID」制度を実施する計画を進めている。この制度により、ネット上の本人確認の責任が企業から政府に移されることとなる。今後、ユーザーはウェブサイトやアプリログイン時に個人情報を提供する代わりに、デジタルIDだけで完全に認証が可能となる。政府は情報の安全性強化と個人情報保護を狙いとしているとするが、一方でデジタル管理強化を懸念する声も少なくなく、中国のネット経済における影響が注目されている。

この新プランによると、中国の市民はアプリを通じて顔認証を含む多くの個人情報を警察に提供し、デジタルIDを取得することができる。申請が成功すると、このデジタルIDを使用して様々なサイトにログイン可能となる。『エコノミスト』は1日に指摘したように、この計画は1年前から試行され、600万人が登録。現在は任意だが、政府メディアや公安は情報の安全を理由に申請を急ぐことを促している。中国には11億のネットユーザーがおり、アリババやテンセントなどの大手ネット企業だけで総資産価値が1.3兆ドルを超える。

中国政府はこれまでもネットの規制強化を試みてきた。例えば「グレート・ファイアウォール」により、数多くの外国メディアや検索エンジン、ソーシャルメディアプラットフォームがアクセス不能。しかし、現行のシステムは複雑であり、利用者は様々なサービスに実名登録する必要がある。

実名認証により、中国政府は企業に一部の管理責任を委託できる。ユーザーが政府に不都合な情報を広めた場合、警察はその企業が把握する本人情報を基に対応できる。警察によれば、昨年だけで4万7000人が罰せられた。ネット企業も監視に協力しており、微博のようなプラットフォームはキーワードフィルタリングや大規模な監視チームを通じてユーザーを管理している。

『エコノミスト』によると、「デジタルID」は既存のネット監視制度の進化版である。今後はネット企業が個々のユーザーを把握することは難しくなる。ユーザーはデジタルIDを使ってログインし、個人情報を提供する必要がなくなるからだ。企業は匿名化された情報のみを参照できるが、詳細なデータは警察のみが所有する。

なぜ今推進するのか？

実際、世界にはオーストラリアや英国など、多くの国で類似のデジタルIDシステムが存在する。それらは主に行政サービスで使用され、警察管理ではない。インドは2009年から「アダー」システムを進めており、称賛されている。一方、中国はその厳密な管理体制にもかかわらず、デジタルIDを早期導入しておらず、これは一部の観測者を驚かせた。

ではなぜ中国政府が今このシステムを推進しようとしているのか？『エコノミスト』は、短期的には消費者の保護が目的であると指摘する。多くの中国人が個人情報の流出や電話勧誘に悩まされ、データ漏洩がテレコム詐欺を膨らませている。これにより、中国では毎年数十億人民元の損失が生じている。国営メディアは「これは政府が我々に提供する防弾チョッキのようだ」と誇らしげに映像で伝えている。

反対の声

政府の大々的な推進にもかかわらず、批判者たちはデジタルIDが市民監視を強化することを懸念している。警察が各個人の使用するウェブサイトやアプリの詳細を収集できるようになるためだ。将来的には、これらのデータがより精緻化されたオンライン監視システムに組み込まれる可能性がある。昨年初めて発表された際には議論を呼び、北京の清華大学法学院教授がこの制度を「罠」と呼んで批判したが、コメントは削除され、彼女のアカウントは一時停止された。

『エコノミスト』は、中国政府のデータ管理実績も信頼できないと指摘する。地方公務員の給与は高くなく、彼らの中には金銭目的で価値あるデータを販売する者もいる。データベース管理も甘く、2022年には上海公安のデータベースからハッカーが10億件の個人情報を盗みだしたが、管理者コンソールにパスワードが設定されていなかったことが原因だ。

背景にある大規模な構想

長期的に見ると、このデジタルID計画は中国の大規模構想の核を成す。その目標は、経済活動から生まれる大量データの管理をより強固かつ集中させることだ。一部では国家の安全保障が目的とされている。不正が民間人の個人情報を手にした場合、フェイクニュース拡散やネット攻撃の標的となるリスクがある。

当然ながら、この構想の裏には経済的な機会も潜んでいる。中国政府はデータを労働力、資本、土地と同等の生産要素として見なし、企業の独占ではなくデータの広範な使用・取引を望んでいる。このため、地方政府はデータ交換所の設立を進めており、政府機関や企業がデータを貨幣化して取引可能となる。例えば深圳では、企業が国家電力網の電力使用データを購入できる。今年6月には、中国国務院が新たな規制を導入し、各政府部門間でのデータの「囲い込み」を防ぐ動きを見せた。全国規模のデータ取引所も進行中である。

これすべてが中国の膨大なデータが生み出す「データの恩恵」に関わることであり、誰がその恩恵を受けるかに関わっている。

『エコノミスト』は、デジタルIDが民間のネットプラットフォームの利益を損なう可能性も指摘している。中国政府は近年、多くのネット企業に対する強化策を取ってきた。例として、2021年にはアリババの金融部門が中国人民銀行とデータを共有するよう圧力を受け、同年、配車サービス「滴滴出行」はニューヨーク証券取引所に上場したものの、翌年「数百万件のユーザーデータを不正に収集」したとして罰金を科され、事業を強制撤退させられた。現在、中国のネットデータの管理権が急速に国家機関に集約されている。

集中化データ流は中国のAI発展を後押しする。『エコノミスト』は、中国企業が米国製のAIチップ購入を禁止されているものの、アルゴリズムに高度なデータを供給することで優位性を追求していると指摘する。中国各都市に存在する監視カメラ群によって、中国企業は膨大なデータを利用し、顔認識技術の分野でリードしている。

しかし、中国政府がデータ技術に楽観的である一方で、2022年の上海公安のデータ漏洩事件は、国家による集中管理が必ずしも安全ではないことを示している。『エコノミスト』は、こうしたスキャンダルがデジタルIDなどの国の計画に対する警戒を生む可能性があったが、「幸いにも」、中国の国営メディアやテック企業が迅速にこれらの報道をネットから抑制したと報じている。

【日時】2025年07月06日 00:58
【提供】風傳媒

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